ムー大陸です
私のオススメ洋楽を紹介していく洋楽至上主義のコーナーです。17回目の今回は、
「Reality(愛のファンタジー)」
です。
これは映画「ラ・ブーム」の主題歌です。1980年のフランス映画。ソフィー・マルソーのデビュー作で、当時13歳でした。ブームとはパーティーの事で、フランスのティーンたちの社交場のようなもの。そこで主人公が素敵な男の子と出会って、恋をする、その行方は?というたわいのない青春ムービーです。ブームのようなフランス独特の文化も描かれていて興味深い部分はありますが、結局のところ、ソフィー・マルソーを見る映画でしょう。
いや、もう一つだけ良いところがあります。それがこの主題歌「Reality」です。主題歌ですから、エンドロールとともに流れたりしますが、劇中でも素晴らしい使われ方をしています。ブーム、すなわちパーティーで、マチューという男の子が主人公ヴィックの耳に背後からウォークマンのヘッドホンを付ける。そのヘッドホンから聴こえる歌がこの曲。これを聴いた瞬間彼女は恋に落ちて、マチューと抱き合います。この映画のベストシーンでしょう。
ちなみに、本当に映画で使われているのはソニーのウォークマンです、1979年発売ですから、映画制作中に発売されたばかりのものを演出に取り入れたんですね。
ちなみに、「ラ・ブーム2」では「ラ・ブーム」の盛り上がりが何だったのか?と言いたくなるほど、その恋愛は冷めています。これが、また、ティーンらしいと言えばらしいですけど。
話を主題歌に戻しましょう。何と言っても、この曲メロディが美しい。個人的にはスタンダード化してもおかしくない自然で豊かなメロディだと思っています。作曲は巨匠ウラジミール・コスマです。さすがですね。ルーマニア人の彼ですが、フランス映画界が主戦場でした。彼がこの映画の主題歌を含め音楽全般を担当しています。
歌詞についても少し触れておきましょう。と言うのも、原題「Reality」つまり現実に対し邦題は「愛のファンタジー」って真逆に思えます。よくあるナンチャッテ邦題か?と思うかも知れません。いや、意外とそうじゃないんです。「夢こそが僕の現実」「たった一つの現実の空想だ」という内容です。Real Fantasyという英語です。ちょっとよく分かりません、現実の空想って何?なので、「Reality」が「愛のファンタジー」でも内容的にはOKです。意味は不明、ティーンの夢と受け取りましょう。
歌ったのはリチャード・サンダーソンです。彼はバークレー出身のミュージシャンで、コスマによる抜擢で主題歌を歌うことになりました。彼にとって最大のヒットとなりました。確かにこの映画のサントラで主題歌を含めて何曲か歌っていますが、それ以外は聴いたことないです。彼のアルバムとかアップルミュージックにも無いです。声は甘く、実にこの曲に合っているし、映画の世界、初恋物語にもマッチしています。さすがコスマの慧眼です、恐れ入ります。映画も主題歌もヨーロッパ中で、そして、日本でも大ヒットし、この曲は全世界で800万枚を売り上げました。
ただ、私の印象ではそんな風に感じません。と言うのも、ヨーロッパ中でと言いましたが、イギリスではこの曲ヒットしていません。そして、世界最大のマーケット、アメリカでも全く無風です。いわゆる、ロックの本場、ポップミュージックの王道、英米で売れていないため、位置付けとしてはナンチャッテ洋楽としてどうしても捉えてしまいます。例えば、ユーロビートなんかと同じ様に。
そもそも不思議です、何故フランス映画なのに英語の主題歌なんでしょう。リチャード・サンダーソンはイギリス人です。初めから英語でいくつもりだったから、彼を抜擢したのでしょう。フランス映画って誇り高いから、わざわざ主題歌を英語にするって意外です。やはり、ヒットを狙ったと考えるのが妥当です、これは。その割に英米だけ売れないっていうのも面白いと言うか皮肉と言うか、音楽は難しいですね。ひょっとして、アメリカ人のR&Bシンガー、もう少し名の知られてシンガーなら英米でもチャートイン出来たかも知れません。曲には充分力があるので。
ただ、やはり、80年代初頭、この時期の英米はロック色が濃いです、あるいはテクノ系、シンセの音なんかが強いので、この甘いバラッドは刺さらなかったのかも知れません。
こういうのは結構バカにされるんですよね。ギルティプレジャー(恥ずかしくて他人に言いにくい趣味)的に捉えられるかも知れませんが、全然そんな事はありません。私もロックな人間ではありますが、どうしてもこの手の美しいメロディが好きなんです。相反する趣味の様に思われるでしょうが、私の中では全く問題なく並立するのです。
私は後になって映画を観て、主題歌が気に入ってサントラを入手したのですが、英米でチャートインした記録が無かったので、全然売れてないと思っていたんですよ。実はヨーロッパ、アジアでそんなに売れていたと知って嬉しかったですね。ですから、皆さんにも聴いて頂きたい。
それでは、また。
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「カラキリクルコロ」
「下剋上」
「春に死のう」