ムー大陸の音楽探検

ボカロP・ムー大陸が紹介する音楽のアレやコレや

ホイットニーの映画観ました

ムー大陸です

 

 

先日、映画「ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY 」を観ました。ちなみに原題は「I Wanna Dance With Somebody」だけです。タイトルの通り、歌姫ホイットニー・ヒューストンの生涯を描いた伝記映画です、ドキュメンタリーじゃありません、ホイットニー役はナオミ・アッキー氏です。ネタバレもありますので、未見の方はご注意下さい。

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この手のミュージシャン伝記映画は必ず観ます。ホイットニー・ヒューストンなんてそこまで昔の人じゃないように思いますが、既に亡くなっているんですから、それを思うとちょっと辛い映画なのかなと考えてました。

 

やはり、その通りで、輝かしい栄光に包まれた前半に対して、薬によってそれが崩壊していく後半が悲しくてね。観ていて痛い。

そもそも何で薬に手を出すんだよって普通に私たちは思うけど、映画にも描かれていましたが、そこは大きなプレッシャーがあるんですよね。彼女ほどのシンガーになると、常に大きなビジネスの渦の中心にいます。大金と多くの人が動きます。特に彼女は曲を書いたりする訳ではない生粋のシンガー、それも声で勝負するタイプなので、肉体労働というかアスリートに近いものがあって、巨大な圧力が彼女の身体に直接かかってる感が強烈にあります。それは尋常でないストレスでしょう。私などには想像もつきません。

 

本来なら、そこを家族や友人に支えられて乗り切っていくのです。実際、アスリート達もそうしているでしょう。ホイットニー自身もそれを求めていました。ところが、それが上手く行かないんです。何と言っても、彼女の父親がクズです。成功したミュージシャンあるあるですが、父親がマネージャーで、その実、金に群がる寄生家族、それも湯水の如く使います。なまじ権限があるから始末が悪く、金で仕事を選びます。儲かるなら、娘の負担を顧みずツアーを組みます。これでは支えどころか、プレッシャーが増すばかり。

親はさておき、夫と暖かい家庭を作れれば良かったんですが、皆さんご存知の通り、夫ボビー・ブラウンも中々のクズで、浮気、裁判沙汰を繰り返す。一向に彼女のストレスは減りませんでした。と言うより、彼らこそがストレスの元凶だった。その結果が彼女の死です。映画「Elvis」におけるトム・パーカー大佐を見たような気分の悪さでした。映画の原題がヒット曲のタイトル「I Wanna Dance With Somebody」、誰かと踊りたいって言うのは彼女の家庭への憧れを言っているのかも知れません。

 「I Wanna Dance With Somebody」

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とは言え、随所に出て来る彼女の歌は本当に素晴らしい。デビュー後のヒットチャートでの快進撃、映画「ボディガード」の大成功、今や伝説、スーパーボウルでの国歌斉唱などは、圧倒的な迫力を感じます。声が衰えたと言われる復帰後のテレビ出演でさえ、神掛かっています。その舞台裏をドラマとして見れることは大きな魅力です。

「How Will I Know」

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「I Always Love You」

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「National Anthem(Stars Spangled Banner)」

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また、彼女のプロデューサーだったクライヴ・デイヴィスとの関係が描かれていたのが素晴らしいです。クライヴ・デイヴィス氏は多くのミュージシャンを発掘した名うてのプロデューサーで、ロックの殿堂入りも果たしています。ジャニス・ジョプリンを発掘したのも彼です。

彼が色んな作曲家に曲を書かせてはホイットニーに聴かせる。彼女が良い悪いを判断を下す。最大限彼女の意思を尊重し彼女の実力を引き出したのはさすがです。そして、デモを聴いて、「キーを上げたら良くなる」など、ホイットニーは自分ならどう歌いこなすかという想像力に長けていて、クライヴ・デイヴィス氏すら気付かない曲の魅力を発見する。この2人のヒット曲の作り方が大変興味深かったです。ホイットニーの周囲にいた男性で立派なのは彼だけなのです。彼はアーティストの私生活には口出しない主義ですが、一度だけ彼女に言います、「君にはリハビリが必要だ」と。ジャニス・ジョプリンを側で見た男の言葉です。泣けるシーンです。

 

映画の中で、彼女がホワイティと批判されるシーンがありました。彼女の歌っているヒット曲が、黒人の魂を忘れて、白人に擦り寄った歌だという意味です。不思議な批判だと思いますね。彼女に限らず、多くのブラックミュージックのヒット曲は万人受けを目指していますから、そんなの当たり前です。むしろ私はいつどこで彼女の歌を聴いても、ゴスペルを感じますけど。

そこら辺のエピソードの取り上げ方などが表面的だったり、彼女の人生の中の数々の出来事を簡単に追いかけていく感じがあって、全体的には映画として平坦な印象を受けて、盛り上がりに欠けるものでした。なので、話としても見るのが辛いですから、もう2度と見ないと思います。まぁ、1度は観てみて下さい。

 

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ここまで書いて来て何ですが、私は彼女の大ファンという訳ではないんです。すみません。彼女の魅力はサウンド面で何か斬新なことするとか、驚かせることじゃないので、私の好みとは少し異なるのです。彼女の最大の武器は声、どこまでも伸びて行くような、かすれない、しゃがれない声です。でも、かすれるからカッコいいとか、しゃがれるから痺れるという感覚ってあるじゃないですか。死の直前には彼女は全盛期の声を失っていました。でも、だからこそ、これから彼女の歌は深みを増したのではないかと思えて仕方がないのです、ビリー・ホリディがそうだったように。本当に早過ぎる死でした。残念でなりません。

それでは、また。

 

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下剋上

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「春に死のう」

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