ムー大陸です
私のオススメの洋楽を取り上げる洋楽至上主義のコーナーです。今回は、
「Lonely Boy」
です。
よくあるタイトルです。誰の「Lonely Boy」なの?って声があってもおかしくないです。はい、1976年のヒット曲、アンドリュー・ゴールドの「Lonely Boy」です。ポール・アンカのヒット曲ではありません。
アンドリュー・ゴールドはウェストコーストのスタジオミュージシャン、それもマルチプレイヤーで、作曲家、プロデューサーです。数多くのセッションに参加しており、ミュージシャンズミュージシャンのような存在。日本では矢沢永吉氏とも一緒にやってます。中でもリンダ・ロンシュタットとは縁が深く、彼女のヒット曲「You'er No Good」ではギターを弾いています。素晴らしいソロです。
そんな縁もあって、この「Lonely Boy」では彼女のコーラスが聴けます。2番のAメロですかね、そこしかハモリないですから、分かりやすいはずです。とは言え、別にそこがストロングポイントって訳じゃないんです。この曲ポップでキャッチー、典型的な70‘sポップです。素直なメロディ展開は安心して聴いてられますね、多少素直過ぎるかな、最後の「Lonely Boy🎵」で上がっちゃうとこなんてベタですよね。でも、そこがいい。
ところが、その素直なメロディに微妙に不自然なアレンジが付くんですよね。裏打が掴みにくい。さすが名うてのスタジオミュージシャン、テクニカルです。イントロから歌に入った瞬間に「アレ?逆?」みたいな感覚になります。
この明るい曲にはちょっと暗い歌詞が付いてます。まぁ、「Lonely Boy」ですから、寂しい少年の歌、暗くて当然なんですけど。
何で寂しいのか?
この歌の主人公は子供の頃、両親に大変可愛がられます。両親は「お前は大事な一人息子だから、自分たちが学んだ事を全て学ばせよう」と考えます。暖かい格好をさせて、学校に通わせ、誰にも馬鹿にされない人間にしようと言うのです。それ自体悪くありません。
ところが、妹が生まれて、その愛情が妹に向くと、両親は妹にも同じように接します。何しろ一人娘です。すると、この歌の主人公は「あれ?話が違う」。自分は大事な一人息子のはずなのにと感じる。これが寂しい少年の正体です。言っておきますが、妹が生まれて、お兄ちゃんの世話をネグレクトしたという事ではありません。「あなたはお兄ちゃんでしょ」くらいの話でしょう。でも、その幼児体験の影響は大きく、彼は16歳で家を出ようとするんです。実に不思議な内容です。これは精神を病んだティーンエイジャーの話と解釈すべきなんでしょう。
ただ、この主人公1951年生まれなんです。歌の冒頭で言ってます。実はアンドリュー・ゴールド自身が1951年生まれ。なので、一部ではこれは自伝的な歌とも言われています。でもですよ、アンドリュー・ゴールドの父親っていうのは、「栄光への脱出」でオスカー受賞の作曲家アーネスト・ゴールド、母親はマーニ・ニクソン、有名ミュージカル映画の吹替えシンガーです。つまり、両親は音楽エリート、両親が自分たちが学んだ事を全て学ばせようとしたのは歌詞の通りだったように思えます。だからこそ、アンドリュー・ゴールドはミュージシャンになったと言える。だとすると、歌の主人公のように彼は別に両親とは決別したわけではなさそうです。
1951年生まれと自分と同じにしたのはその方が無難だからではないかと推察します。誰か他者を精神病として描くより、自分のようにしてしまう方が何かと批判も回避し易いでしょうし、勝手に想像を膨らませてくれる人もいるだろうという訳で、このストーリーはフィクションと考えます。でも、ちょっと面白いですね。
この曲はアンドリュー・ゴールドの唯一の全米TOP10シングルです。最高位7位でした。でも、全米TOP40ファンなどからは今でも愛される一曲です。かつて、私が自分が住んでる街のローカルなレンタルビデオショップでDVDを探していると、この曲がかかりました。レジにはバイトの兄ちゃんが2名。片方の兄ちゃんがこれをかけたらしい。そして、もう一人に「な、いい曲だろ?」と勧めていた。私は心の中で「同志!」と叫んだのは言うまでもありません。
それでは、また。
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面白い曲がきっと見つかります。
「鬼火」
「死ぬまで生きてくんです」