ムー大陸です
和歌、短歌といったものは、
今では圧倒的に文学の世界に位置するものと捉えられることが多いけれど、歌と言うからには、本来和歌はある程度節回しによって歌われるものです。和歌を作ることを「詠む」と言いますが、「詠」の字は「詠う」と書いて「うたう」とも読みます。当然、歌ごとに異なる独自のメロディをつける訳ではありませんし、和歌が言葉の意味に重点を置いていることに間違いなく、文学的価値の方が大きいとは思いますが、音楽としての一面も重要視すべきと考えます。
現在でも、歌会始では伝統的な節回しで歌われます。新しい和歌を披露する、いわゆる披講の場では、まず最初に節をつけずに読みます。かなり長く伸ばします。句の間隔を三呼吸程度取るのだそうです。音程は洋楽のAですからラです、黄鐘調と呼ぶそうです。その後、節を付けて歌います。その節回しも決まっています。流派によって異なりますが、例えば、甲調、乙調、乙の甲、乙の乙と言われる節回しがあります。
日本の国歌「君が代」は元々和歌です。五七五七七で構成されています。もちろん、現在では明治時代に林広守氏が作曲したメロディがついていて、それを歌っているわけですが、短歌として節を回す場合は、そうした伝統的な節回しで斉唱します。節回しの練習には君が代を斉唱するそうです。下記動画を見て下さい。
その節回しと同じかどうかは別として、かなり古くから和歌は歌われていたと記録にあります。奈良時代には歌われていたとも言われています。万葉集に載っている和歌は皇族、貴族のみならず、農民や大道芸人の歌などもあります。だとすると、貴賤の別無く和歌を詠み、節を回していたのかも知れません。古代の日本はとても素敵な国だったようです。
一方で、その歌の内容はどのようなものでしょう。いわゆる和歌に詠まれたもの、現代の歌謡で言うところの歌詞には何が編み込まれているのか。分かり易いところで、百人一首を参考にしたいと思います。
百人一首を見てみると、１００首のうち恋の歌が４３首もあります。まぁ、昨今の流行歌にしてもラブソングが多数を占めていることを見ると、今も昔も最大の関心事は恋愛ということでしょう。そこらへんは当たり前と言えば、当たり前ですが、あらためて見ると、１０００年経っても人の心は変わらないのだと認識します。
さて、恋の歌以外では、旅やその他の歌が２５首あります。旅の歌自体はそう多くはありませんが、色んな土地を歌った歌はたくさんあります。ご当地ソングみたいのも含めると、結構な数のヒット曲もあるでしょう。
それ以外は季節がらみの歌ということになります。
季節の歌っていうのも現在と共通だと思いますね。J－POPにおいても春になれば、桜の歌が増えるなんてことは普通に起こることです。
その中でも最も多いのが夏の歌ではないでしょうか？
それこそ夏の歌を歌っているだけでも商売が成り立っているバンドもいるくらいだから、夏は特別なのではないか。ポップスの世界における夏、それは自由で開放的で、恋が芽生える目くるめく季節。そんな描かれ方ですよね。もちろん、他の季節も季節ごとに歌われるけれど、夏の比ではない。
では、百人一首ではどうか？
夏の歌は何と４首しかないのです。実は春夏秋冬の中で最も少ないのが夏なのです。
では、最も多いのは？
そう、秋なんですね。
秋の歌は１６首と圧倒的に多い。ちなみに春６、冬６ね。
つまり、恋の歌に次いで多いのが秋の歌ということです。
ここが今昔の差。
やはり昔の感覚からすると、秋こそが「実りの季節」なんでしょう。だからこそ、暑く辛い夏を乗り越えてやっと来た豊穣の季節をありがたがる。
一方で現代の感覚からすると、夏は暑いが故に夏休みがあって、海に山にレジャーへ。当然、恋が芽生えることもあるかも知れない。そして、秋を迎えると、それが夏の幻想であったと気付くのだ。だから、秋は感傷的な季節になっている。
正直、それは本当に夏の歌なのか？恋の歌に入れた方がいいんじゃないのか？という疑問はこの際忘れましょう。
歌う内容にはそうした違い、感覚のズレのようなものも存在しますが、とは言え、今も昔も人は思いを歌に乗せて歌うのです。１０００年経ってもそれは変わらないのです。やっぱり、それは素敵なことです。
それでは、また。
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「NSA」
「下剋上」
「春に死のう」
