ムー大陸です
私のオススメの歌謡曲を紹介するビバ!歌謡曲のコーナーです。今回はこの曲、
「ブルドッグ」
です。
これはフォーリーブスの曲です。フォーリーブスは初期ジャニーズ事務所を代表するアイドルグループです。ヒット曲も、「オリビアの調べ」「地球はひとつ」「夏の誘惑」などいくつかあり、全盛期には紅白歌合戦にも何度も出場するほどの人気者でした。
しかし、本日のテーマ「ブルドッグ」はそんな彼らの全盛期のヒット曲ではありません。1976年、一時期の人気が無くなった彼らは、何とか盛り返しを図るべく名曲「踊り子」を出します。
「踊り子」 フォーリーブス
初めて賞を獲得する事は出来ましたが、売上的には振いませんでした。その翌年、更に起死回生を狙った一曲が「ブルドッグ」でした。
これが「踊り子」を上回る名曲です。
曲、詞共に名作でありますが、先ずは曲から参りましょう。作曲は都倉俊一氏です。日本歌謡界を代表する巨匠の一人です。阿久悠氏とのコンビでピンクレディーを育てたり、デビューから山口百恵氏をスターに押し上げた功績は不滅です。そんな都倉氏ですから、名曲は数多ありますが、その中でも屈指と言えるでしょう。曲調は激しくロックを感じさせます。現に近田春夫氏がこの曲をカバーし、見事にロックしています。これは都倉氏のお得意で、一つのヒットパターンとして有していたものです。後に渋谷哲平氏に提供した「Deep」などは正にこの曲を踏襲しています。
「Deep」 渋谷哲平
また、ピンクレディーの作品にもかなり使用しています。「カメレオン・アーミー」あたりは同傾向かな。こちらはディスコがかなり入ってますけど。
「カメレオン・アーミー」 ピンクレディー
一方で、この歌の作詞は伊藤アキラ氏です。代表的なヒット曲と言えば、「かもめが翔んだ日」でしょうか。曲に関してはただただ名曲と言えば済むのですが、詞の方は多少異なります。いや、素晴らしいし、大好きなんですけど、何と言うか、よく分からないんですよ、これ。キメの部分の「ニッチもサッチも どうにも ブルドッグ!」ってどういう意味でしょう。
歌詞を全体的に見ていきましょう。
黙れ! うるさいぞお前ら
泣くな! 悲しみにまけるな
こらえきれずに泣きだすのはヤセ犬だ
眠れ! 戦いは終わった
傷は夜明けには薄れる
くやしさだけを胸の奥に刻みこめ
恋の傷跡ならいつか薄れてゆく
男と男の 戦いは永遠に消えない
見ろ! 俺の目を!
そらすな! じっと見ろ!
夜更けの嵐が心を刺す
ニッチもサッチもどうにもブルドッグ Wow
寄るな! 女には用はないダメだ!
この先はくらやみ
甘い言葉もバラの花も香らない
そうさ! 俺たちは男だ
恋を忘れて生きられる
今夜限りで恋人とはおさらばだ
今度めぐりあう日それは花の咲く日
俺の面影をだきしめて君は生きろよ
見ろ! 俺の目を!
信じろ! この俺を!
夜更けの嵐が心を刺す
ニッチもサッチもどうにもブルドッグ Wow
基本的にこの歌詞は男と男の戦いを描いています。具体的に何の戦いかは分かりません。恐らくはビジネスでもスポーツでも何でもいいのですが、もう少し普遍的で、それでいて日常的な、夢を賭けた大きな戦いの世界を表現しているのだと思います。そして、彼ら戦い続ける男にとって最も大事なものは夢であって、決して恋愛ではないのです。だから、戦うべき今、女は不要であると言います。勝利を得るまで待ってくれ、そういう事です。ラブソング中心の歌謡曲において、これは逆説を狙ったのでしょう。前回紹介した西城秀樹氏の「若き獅子たち」にも通じるところがあります。普通のラブソングよりも新鮮に映ります。
さて、ではブルドッグとは一体何なのか?それは男そのものを比喩的に表しているのでしょう。闘犬のイメージでしょうか、戦う男を犬に喩えたのです。歌の最後のウァー!というシャウトも犬繋がりとも言えます。
舞台は夜です。一日戦い抜いて男は疲れ果てている。でも、その疲れも朝になれば回復している。泣き言を言っている場合ではない、明日も戦いだってところです。サラリーマンの毎日をイメージさせますね。
そして、その夜は嵐だったのです。外は嵐、その激しい嵐が男の燃える心を激しく急き立てるのです。いや、嵐自体も心理描写と考えてもいいです。そこでキメです、「ニッチもサッチも どうにも ブルドッグ!」。本来、ニッチもサッチもは算盤用語の「二進も三進も」で、金銭的に窮した状態、それが転じて、物事が行き詰まった状態を表します。しかし、ここは男たちが戦いで窮地に陥ったということではないでしょう。むしろ、どうしても戦ってしまう男たち、とにかく戦いに明け暮れるしかない男たち、というニュアンスで考えましょう。どうしようもなく男だね、それを「ニッチもサッチも どうにも ブルドッグ!」と歌う、実にカッコいいです、その上、ウァー!と叫びます。最高です。
曲、詞共に最高にも関わらず、この曲は小ヒットに留まりました。オリコンでは最高位40位でした。結局、フォーリーブスの人気は回復せず、この曲の発売の翌年解散に至ります。それでも、この曲がある程度残っているのは、後にジャニーズ事務所の歌手たちがこの曲を歌い続けたからです。最も有名なところではデビュー前の少年隊が「ブルドッグ」「踊り子」と言ったフォーリーブスの楽曲を取り上げていました。まだ、彼らのオリジナル楽曲が制作されていない段階でのお披露目的なTV出演で歌いました。その後も自分たちのオリジナル楽曲を持たないジャニーズJr.たちが歌い継ぐ、ある種ジャニーズスタンダード的な一曲として位置付けられ来ました。TOKIOもカバーしていました。バンドでやるには良いですね。それもこれも「ブルドッグ」が名曲ゆえでしょう。
また、上述しましたが、近田春夫氏が、近田春夫とハルヲフォンのアルバム「電撃的東京」の中でこの曲を取り上げたことも人気を支えたと思います。この「電撃的東京」は名盤なので、アルバムまるごと聴くことをオススメします。このカバーはバンドアレンジで、ロックな仕上がりになっています。人によってはオリジナルよりこちらを好むかも知れません。
いやいや、私は断然オリジナル派ですけど。
それでは、また。
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「NSA」
「下剋上」
「春に死のう」