ムー大陸です
「15の夜」の歌詞「盗んだバイクで走り出す」を考えるから始めて、
前回は「恋の奴隷」の歌詞「悪い時はどうぞぶってね」について考えました。
そして、問題になるのは、歌詞の内容もさることながら、その制作意図であると言いました。過激な歌詞に伝えたい何かがあって、それを通す覚悟があるようなケースとは違い、商売のため、悪気なく書いた歌詞が今となってはアウトだった、こういう制作意図こそが問題だとしました。「恋の奴隷」はそれに該当するとも言いました。
さて、今回はかつての曲で、よく問題とされるものをピックアップして独自に判定していきたいと思います。
「青い果実」
これは山口百恵氏のセカンドシングルです。「あなたが望むなら私何をされてもいいわ」。これも刺激的な歌詞です。ファーストの売上がイマイチだったため、セカンドは過激な方向に走ったのです。これも前回の「恋の奴隷」と同じで、美しく若い女性にキワドイ歌詞を歌わせる悪趣味な制作意図です。山口氏は当時14歳です。「青い性路線」などと言われました。さすがに今ではあり得ない制作意図でしょう。例えば、秋元康氏がAKB48にその手の歌詞を書いたら大変なことになると想像がつきますね。
しかし、その秋元氏もかつては「青い性路線」に近いことをやってました。おニャン子クラブのデビュー曲です。「青い果実」ほど際どく無いというか、ストレートかつコミカルな言い回しでライト感覚に仕上がっていますが、やっている事は「青い果実」と一緒です。これも今では作れないでしょう。実際、今秋元氏はやってないですし。
「時には娼婦のように」
なかにし礼本人の盤
タイトルからして過激です。歌詞も全編性描写に溢れています。例えば、「自分で乳房をつかみ私に与えておくれ」とか。これは「恋の奴隷」と同じなかにし礼氏の作詞です。ただ、これは彼の挑戦なんですね。過激な性描写を含む曲を世に問うという。これは吉田拓郎氏からの依頼でフォーライフレコードから出した作品です。吉田氏もこの歌詞を支持したと聞いています。制作意図が強固です。今でも同様の挑戦をするなら、これはアリです。
「カサブランカ・ダンディ」
沢田研二氏のヒット曲です。冒頭の歌詞「聞き分けのない女の頬を 一つ二つ張り倒して」。ここでしょう、問題は。この歌の主人公は映画「カサブランカ」のハンフリー・ボガートに憧れているんですが、上手くいかずに女も殴っちゃう袋小路に入ってる、そんな内容です。歌の主人公は殴ってないんじゃないか、という解釈をする人もいると聞きます。どうでしょうね、「カサブランカ」のボギーはそんな事しませんから、やはり主人公が張り倒してると考えてます。まぁ、これは沢田氏のカッコよさありきで刺激的歌詞を作ってしまったんでしょう。実際ジュリーにだったら張り倒して欲しいとファンは思ったかも知れませんが、他では通じないし、今では作れないでしょう。
「S•O•S」
これは「カサブランカ・ダンディ」と同じ阿久悠氏の作品です。冒頭の「男は狼なのよ 気をつけなさい」。いきなり男性差別です。昭和は今よりも男尊女卑がキツかったですから、差別的とまではいかなくても、女性がひたすら従属的な歌詞が多いんです。「女のみち」「涙の操」あたりが大ヒットしていたんですから。でも、これは男性差別、珍しいですね。コミカルな表現で悪意が無いのは十分伝わりますが、完全に決めつけてるので、やはり今ならアウトかと思います。
ひとつ毛色の違うものを
「同期の桜」
これは軍歌というか「軍事歌謡」です。この歌詞「見事散りましょ国のため」「花の都の靖國神社 春の梢に咲いて会おう」。放送出来るかどうかを考える前に、現在のテレビなどではそれほどニーズも無いから、考えられることもまず無いと思うのですが、仮に断固たる思想を持ってこの歌詞を世に問うなら、制作意図としてはアリだと思います。それがどれほど支持されるかはまた別の話として。
とまぁ、ちょっと考えただけでも、すぐにいくつか出てきます。傾向としては「15の夜」のような犯罪行為の描写、あるいは暴力行為や性描写はフォークやロック系のアーティストに多く、それらはメッセージと結びついていて、制作意図は今でも頷けるものと考えられます。
一方で歌謡曲は商売上の必要性から過激な歌詞を歌手に歌わせるという意図が強く、それが問題となるケースが見られます。特に男尊女卑のギャップが感じられる歌詞は差別的と捉えられ、今では制作することが難しいと思われます。そういう歌謡曲は山ほどあるでしょう。
とは言え、それらの今では制作出来ないであろう歌が、その不穏当な内容ゆえに嫌いなのかと問われれば、許しはしませんが、好きだと答えるでしょう。すみません。皆さんはどうですか?
それでは、また。
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「春に死のう」
「Evergreen」