ムー大陸の音楽探検

ボカロP・ムー大陸が紹介する音楽のアレやコレや

ビバ!歌謡曲15〜「街のサンドイッチマン」

ムー大陸です

 

私のお気に入り歌謡曲をオススメするビバ!歌謡曲のコーナーです。今回は、

 

「街のサンドイッチマン

 

です。

 

www.youtube.com

 

これは鶴田浩二氏の1953年のヒット曲です。

鶴田浩二氏は俳優で、映画界のトップスターでした。イケメンだったので、女性ファンが多く、アイドル的な人気を誇っていました。それでいて時代劇、現代劇何でもこなす演技力を有し、何と言っても、どこか哀愁のある佇まいがありました。後にやくざ映画などに多く出演し、男性からの支持も大きかったです。

 

その鶴田氏が初めて放ったヒットが「街のサンドイッチマン」です。この歌は実に素晴らしく、その鶴田氏の哀愁が如何なく発揮されています。この歌を語るキーワードは哀愁です。

 

先ず、作曲は国民栄誉賞の名作曲家・吉田正氏です。「誰よりも君を愛す」「いつでも夢を」で2度レコード大賞を受賞、橋幸夫氏の一連のヒット曲は名曲揃いです。彼の作風は「都会調歌謡」と呼ばれました。それがどんなものを指すのか明確な定義はありませんが、私なりに解釈すると、ジャズっぽいモダンな響きの中に、歌謡曲的な野暮ったさが同居しており、どこか哀愁を帯びたサウンドという感じです。はい、ここで出ましたキーワード哀愁。「街のサンドイッチマン」の曲も正にその通りの出来です。これを今聴いて、古臭いと思うか、今は無いものと思うかは分かれるところでしょうが、私は後者ですね。

 

一方で、作詞は宮川哲夫氏です。この人も昭和の名作詞家です。鶴田氏のヒット曲以外では「東京ドドンパ娘」が好きです。中々思い切った作品ですよ。

この「街のサンドイッチマン」においても彼の詞は大きな存在感を示しています。サンドイッチマンと聞くと、多くの人が人気お笑いコンビを思い浮かべるかも知れませんね。サンドイッチマンとは首から大きな看板を前後に下げた人間広告塔を指すのです。今ではあんまり見掛けません。戦後、高度成長期あたりまでは、こうしたサンドイッチマンチンドン屋のような古風な広告宣伝が活用されていました。

 

この歌のサンドイッチマンは「ロイド眼鏡に燕尾服」「プラカード」とありますから、チャップリンを模した道化の格好でプラカードを掲げて宣伝をしています。そもそも看板に挟まれるからサンドイッチマンなのですが、そのような宣伝マン全般をサンドイッチマンと呼ぶと考えていいでしょう。

 

実はこの歌のサンドイッチマンには実在のモデルがいるとされています。元帝連合艦隊指揮官の子息で、父親はA級戦犯として処刑され、自らも生活に窮しサンドイッチマンで糧を得ていた人物です。もちろん、いいとこのボンボンが落ちぶれて道化の真似をしてなんて言うのは分かりやすく、悲哀を感じます。

とは言え、そうした実在の悲劇を匂わせながらも、人生は無常だ、人の一生なんて儚い、人の心は移ろいやすいのだというより大きな世界観を感じさせる歌詞に昇華しています。その上、そんな無常な世界でも頑張って生きていこうという小さな希望を盛り込んでいます。そこには漂うのです、はい、キーワード出ます、哀愁が。見事な歌詞です。

 

哀愁のサウンド、哀愁の歌詞、そして、ここに哀愁の佇まいのある鶴田浩二氏の歌です。彼は上述のように俳優です。歌に関してはレコード会社に頼まれて仕方なく始めたそうです。人気者ですから、レコード会社も必死です。ですから、彼の歌は決してプロのそれではありません。

 

例えば、歌手が歌詞をメロディに乗せると、当然ですが歌になります。腹式呼吸を使って、恐らくは普段喋っているのとは違う声で特別に響かせて言葉を歌にするのです。上手い人はちゃんと劇場の隅々まで届くように声を出します。

鶴田氏にそういう芸当は無理でしょう。彼自身、自分の歌は素人だからと、バックバンドの連中にいつも丁寧にお辞儀をしていたと言います。それほど歌に自信が無いのでしょう。

 

歌手ではない彼は言葉を歌にする事は出来ませんが、彼が歌うと、台詞になるのです。いつもの声と喋り方で彼は歌います。それは俳優鶴田浩二が囁いた台詞のように私たちに響きます。

歌に出来ていない分実にナチュラルで、語りかけられている感覚です。それこそが鶴田浩二氏の歌の魅力です。

 

哀愁のメロディ、歌詞、そして、歌三つが揃ったこの曲は鶴田氏にピッタリです。他の歌手ではこうは行かないでしょう。それまで普通の恋愛ソングを歌っていた鶴田氏にいきなりこれを歌わせたのは誰のアイディアだったんでしょうね。作詞の宮城氏か?それとも鶴田氏と同じような戦争体験を持っていて、昵懇の仲だった吉田正氏でしょうか?それとも別のスタッフのアイディアなのか?まさか鶴田氏のリクエストとか?いずれにせよ、素晴らしい試みでした。名曲とは曲、詞の良さもさることながら、歌手との相性が大事だと思わせてくれる一曲でした。是非、確かめて下さい。

それでは、また。

 

私のYouTubeチャンネルもよろしくお願いします。

www.youtube.com

新曲公開中です!是非聴いて下さい♪

NSA

www.youtube.com

下剋上

www.youtube.com

「春に死のう」

www.youtube.com