ムー大陸の音楽探検

ボカロP・ムー大陸が紹介する音楽のアレやコレや

アニソン魂11〜「MIDNIGHT BLUES」

ムー大陸です

 

 

私のお気に入りのアニソンを紹介するアニソン魂のコーナーです。今回のテーマは、

 

 

「MIDNIGHT BLUES」

 

 

です。

 

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これはアニメ「あしたのジョー2」の主題歌です。

あしたのジョー」については説明不要とは思いますが、日本漫画史に残る名作ボクシング漫画です。原作・高森朝雄(梶原一騎)、絵・ちばてつやのコンビです。少年・矢吹丈丹下段平を通じてボクシングと出会う。ボクサーとして、人としての矢吹の成長を描きます。彼らは東京の片隅のドヤ街で暮らします。拳一つで世界をつかむべく奮闘を続けます。ライバル力石徹との激闘は既に伝説です。そして、ラストシーンはいまだに語り草で、人によって解釈が異なるところでしょう。

ストーリーの基礎はちばてつや氏の細部までこだわる描写力に負うところが大きく、動の梶原、静のちばが化学反応を起こして出来上がった稀有な逸品です。

 

そもそもアニメ「あしたのジョー」は原作漫画が連載中の1970年に開始しました。ところが、アニメの進行が原作に追いついてしまったために、完結する事なく終了しました。長いことほったらかしでしたが、1980年に劇場版アニメ映画が作られた(と言ってもテレビ版の再編集)のを皮切りに、続編のテレビアニメ、劇場版アニメ映画と立て続けに制作されました。

 

そのテレビ版の続編が「あしたのジョー2」です。「あしたのジョー2」の音楽は荒木一郎氏です。「いとしのマックス」「空に星があるように」などのヒットで知られる、また味のある俳優でもある荒木氏です。彼が当初から劇伴まで含め音楽を全般的に担当し、主題歌の作詞作曲も行いました。

 

番組開始時、主題歌は「傷だらけの栄光」という曲。

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これも中々の佳曲で、もちろん、荒木氏の作品です。

26話から主題歌が変わります、それが「MIDNGHT BLUES」です。47話中の26話からですから、ほぼ後半はこの曲です。

 

聴いて頂くと分かりますが、歌詞の内容は全く「あしたのジョー」とリンクしていません。それどころかボクシングとも全く関係のない世界が描かれています。では、ただのタイアップ?と疑いたくなりますが、そうではありません。何しろ、上述の如く最初からずっと音楽全般を荒木氏が担当ですから。これは荒木氏が明らかに意図を持って、一見「あしたのジョー」と何の関係も無いような曲を持って来たと考えていいでしょう。

 

劇中、25話で矢吹丈が東洋チャンピオンになります。その次から主題歌変更です。原作を読むと分かりますが、東洋チャンピオンになるちょっと前から、全体的に陰鬱なムードに覆われて来ます。

一つの理由は矢吹のライバル、カーロス・リベラがパンチドランカーとなり、その原因は矢吹にあると言われたこと。その前には力石の死がありましたから、矢吹自身「またか」という思いと共に、自分が彼らの思いも背負って闘い続けるという悲壮感が漂います。

二つ目は減量です。矢吹はまだ若く、身体は成長を続けていました。矢吹はバンタム級です。当時はスーパーバンタムとか無いから、フェザーへ転級をすればいいんですが、力石が命を賭けて降りて来たバンタム級を矢吹は捨てられません。従って、苦しい減量が必要となる。

三つ目は矢吹のパンチドランカー症状です。矢吹のボクシングスタイルは肉を切らせて骨を断つですから、打たれることも多い。長年のダメージが現れて来ます。

そして、何よりも、矢吹が初めてチャンピオンになったことが大きい。チャンピオンになるのはめでたい事です。ドヤ街から成功する、それを矢吹や丹下は「泪橋を逆に渡る」と表現していました。東洋とは言え、チャンピオンになれば、ある程度それは果たせたでしょう。この時点で世界チャンピオンのホセ・メンドーサを脅かす存在、期待のホープでしたし。

 

しかし、不思議なもので、そうなると、昔はよくつるんでいた子供達や、気軽に冗談を言って来たドヤ街の連中との距離が大きくなってしまいます。一緒にジムで練習した西は引退し、結婚。時によっては丹下すら近寄りがたい雰囲気を醸し出し、一人の時間が増えます。そう考えると、この時期一番果敢にアプローチ出来ていたのは白木葉子か。

 

いずれにせよ、主題歌が変更になった26話というのはそう言うタイミングです。前主題歌「傷だらけの栄光」の激しさが似つかわしくなくなったのです。より重く気怠い、それでいてシニカルに笑うと言った「あしたのジョー」後半の独特の雰囲気を出そうと荒木氏は考えたのだと思います。

彼がそのために選んだのはブルースでした。

絶妙ですね、そこが。曲は暗過ぎず、重過ぎず、でも、気怠い感じ、笑える雰囲気を残しています。ビートルズの「For You Blue」あたりの雰囲気か。アレンジはシンプルだけど力強い、アコギ、ハーモニカ、女性コーラスがいいです。

 

歌詞がまたカッコいい。ふられピンキーなブルースってどういうんでしょう。歌詞の中に、「おまえの熱さ」「あの娘の涙」「あいつの素振り」などの人物が登場しますが、全く「あしたのジョー」ではない世界の住人でしょう、それらは。でも、オープニングのアニメを見て、夕陽をバックにだるそうに歩く矢吹、そこにこの曲が流れると、合っているんですね。「あしたのジョー2」のタイトルの出方も秀逸です。

 

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キャラの名前、必殺技の名前を歌詞に盛り込むというのは、確かに真のアニソンである一つの条件かも知れませんが、そこは作品にもよります、何も必殺技がある作品ばかりではありませんし。最終回ジョーが「真っ白になった」場面で流れるのもこの曲です。どれだけ作品の世界を理解し、それに合ったものが提供出来るかが勝負です。これほど歌詞的にはかけ離れたものであっても、成立することを見事に示した荒木一郎氏の手腕には舌を巻きます。

そういえば、この曲には原田芳雄氏の素敵なカバー、荒木氏とのデュエットがありますので、そちらも貼っておきます。楽しんで下さい。

 

原田芳雄カバー盤

 

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それでは、また。

 

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下剋上

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「春に死のう」

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