ムー大陸の音楽探検

ボカロP・ムー大陸が紹介する音楽のアレやコレや

「盗んだバイクで走り出す」問題について①

ムー大陸です

 

 

本日のテーマはタイトルの通り

あの尾崎豊氏の「15の夜」の歌詞、

「盗んだバイクで走り出す」についてです。

この歌詞を理解出来ない、共感出来ない、不快に思うなどの意見が少なからずあって、一時期話題になったと記憶しています。今回から何回かでこの歌詞を考えるとともに、更に過去の曲、特に昭和の歌謡曲などの歌詞とコンプライアンスについて考えたいと思います。

 

第1回目は、この「15の夜」の歌詞についてのみ考えます。

 

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批判的な意見の殆どはバイクを盗む行為は当然窃盗罪にあたるもの、そんな犯罪行為を歌にしていいのか?あるいは、そんな歌を聴いて不快になるというものです。他に15って無免許じゃね?とか、中にはバイク乗りだから許せないなんて声もあるようです。

 

ただ、普通に考えると、これはフィクションです。だから、小説や映画の中で殺人事件が起きるのと同じです。人が殺されるのは殺人罪、実に不快なものです。だとしても、それを描いた上で事件の解決があって、ミステリーなどは成立します。なので、犯罪自体を描く目的ではないが、前提として必要があります。もっと言うなら、フィクションなら殺人自体を描くことも可だと思います。猟奇殺人者を主人公にするとか。

 

「15の夜」は、聴けば分かりますが、バイクを盗むことを歌いたいのではありません。自由になりたい、でも自由になれない若者の焦燥感や苦悩を歌っていて、盗んだバイクはそれを表現するための一つのアイテムです。犯罪行為による刹那的な刺激が手伝って自由になれたと思うというのは実に巧みな表現だと思います。

 

さて、でもそんな事は百も承知です。誰もフィクションだと分かっています。それでも気になるのは、これが殺人なんかと違って、身近で自分にも起こり得る犯罪だから、想像しやすく身構えてしまうということだと思います。

 

例えば、聖飢魔IIの「蝋人形の館」を思い浮かべて下さい。あれは少女がさらわれて、蝋人形にされてしまうという、それこそ目を覆うような陰惨な猟奇殺人です。そんなものを歌にするなんてけしからんなんて話にはならないんです。そこにはリアリティが無いため、完全にフィクションとしか感じないわけです。バイク乗りが自分のバイクが盗まれたらと想像して不快になる、これもリアリティがあるから。まさか自分が蝋人形にされたらと想像して不快になるなんて人はいないんです。それこそ、こんな問題になるのは、尾崎氏の表現にリアリティがあって説得力があることの裏返しなのだと思いますよ。もし、ありがちな批判をするなら、誰かが真似したらどうすんだ、という感じでしょうか。ただ、それも覚悟して歌っているんです、だってこれロックですもん。

 

ただ、個人的にこの歌が好きかと問われれば、全く好きではありません。犯罪行為が歌われて云々という話ではなく、もう少し本質的なところで相容れませんね。この歌や「卒業」なんかにも通じる部分で、尾崎豊氏の歌詞によく垣間見える意識なんですが、「汚ない大人になるな」というやつ、これがどうにも理解出来ないのです。「15の夜」にもありますね、「心のひとつも解りあえない大人達をにらむ」という歌詞が。これが発売された時、彼は18歳だから、同世代へのメッセージなのかも知れません。

 

でも、当たり前に誰でも大人になるんです。「汚ない大人になるな」と言われて、「じゃあ、汚くない大人になればいい」っていう選択肢は彼の歌詞からは感じない。大人=汚ないなんです。だとすれば、厳しい社会に出て、そこで上手くやり抜いていく事を、成長とは捉えずに堕落と感じてしまう。大人にならない唯一の方法を取ってしまうこともあるかも知れない。私はそういう考えには与したくないといったところです。まぁ、意地悪い物言いをすれば、尾崎氏こそ、周りの同世代の若者よりも早く汚ない大人と契約をして、音楽ビジネスで大金を稼いだのではないかと言われても仕方がないわけです。CBSソニーには大人しかいません、彼のスタッフもみんな大人、そこには信用出来る大人もいるんじゃないの?だけど、極端に若者を煽るんですよね、大人は汚ないと、信用出来ないと。私が「15の夜」を聴いて感じるのはそこの不快感です。実は私以前バイク盗まれたことあるんですけど、そこの歌詞は許せます、ハイ。

 

昔の歌は今では通用しないものがたくさんあると、この歌を一つの例として語るケースがあるように思いますが、そこは少し事情が異なるように思います。この歌はメッセージです。敢えてやっているんで、それを批判しても始まらないです。それにこの歌詞が刺激的なのは今も昔も一緒です。コンプライアンスが厳しくなったのは関係ないです。窃盗は昔から罪ですから。

 

次回は、このような確信犯ではなく、時代の変化とともに、大っぴらには出来なくなった楽曲を追いかけていきましょう。

それでは、また。

 

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「春に死のう」

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