ムー大陸の音楽探検

ボカロP・ムー大陸が紹介する音楽のアレやコレや

映画「Elvis」を観ました②

ムー大陸です。

 

さて、前回は映画「Elvis」を観ました、のはずが、余計な話が長すぎまして、肝心の映画「Elvis」の話が出来ませんでした。今回こそは映画「Elvis」の話を。

 

前回書いた通り、私はミュージシャンの伝記映画が好きなので、大抵は無条件に見ます。今回もそうだったのですが、正直、そんなに気乗りしなかった。なので、PCに映画のデータあったんですが、放っておいた。で、今回そろそろ見ようかと思って仕方なく見たという感じです。

というのも、エルヴィス・プレスリーの話、もう大体知ってます。エルヴィスはアメリカでは歴史上の人物的にその人生は研究家までいて調べ尽くされており、多くの本も出ている。映像作品もそうした研究の成果を組み合わせて脚本が練られているわけですから、本を読んでいれば、あらためて見る必要もないかも知れない。また、映像作品もドラマ、ドキュメンタリーいくつも作られていて、今回の映画と最もかぶるのは2005年のTVドラマ「Elvisエルヴィス」ではないでしょうか。私はこれを観ていたので、斬新さは薄れていた、というか、何故、今更という思いが強かったです。まぁ、それから20年近く経っているから、アリと言えばアリですが。

 

ただ、それよりも何よりも、エルヴィスの話を振り返ると、気分が悪くなるんですよ。彼の話はただのサクセスストーリーにはならない。また、よくある栄枯盛衰でもない、ドラッグも多少出てくるが、それがメインでもない。女関係はもちろん派手だが、それもサブストーリー。彼のストーリーにはどうしてもトム・パーカー大佐が出て来るのです。彼を発掘したマネージャーで、的外れな仕事を押し付け、過度な搾取を続けていた悪徳です。今回の映画ではトム・ハンクスが演じていた。私は彼が大嫌い。と言うか、彼を好きなエルヴィスファンはいないでしょう。結局のところ、エルヴィスと大佐の葛藤の話がメインとなってしまい、非常に暗い話になるんです。何故かよく分からないのだが、エルヴィスは不思議なほど、大佐に反抗出来ない、それがもどかしいのです。

 

確かに、無名のエルヴィスを見出し、メジャーに押し上げたのは大佐です。でも、エルヴィスだったら、大佐が見逃しても、すぐに他の誰かが見つけたでしょう。彼の功績と言えるのか?エルヴィスをハリウッド進出させ、10年間に渡って映画を撮る大型契約を取り付けた。これは敏腕の証だが、10年という長すぎる契約のため、エルヴィスは時代遅れな存在になってしまった。また、大佐が個人的理由で国外に出られないため、ワールドツアーに反対したり、ラスヴェガスのホテルとのこれまた長すぎる5年という出演契約を決めたり、とにかく、エルヴィスのキャリアをつまらない方向へ持って行く選択を重ねたように思えて仕方がない。

 

ただね、60年代、ザ・ビートルズストーンズが活躍している時期に、エルヴィスがロッカーとして活躍する方法はいくらでもあったと思うんです。映画を作ったから、レコードが作れなくなるわけじゃない。映画の主題歌が入ったレコードとは別に、彼のオリジナルアルバムを作るという発想がなかったんだと思います。トム・パーカー大佐のみならず、エルヴィスにも。当時最先端のアーティストはどれほどのアルバムを作るのか、それにこそ力を入れていた。エルヴィスにはその意識が無かったと感じます。多分、エルヴィスが自分のアルバムを作りたいからということで、それこそ、レノン、マッカートニーやジャガー、リチャードに声を掛けたら、喜んで協力したんじゃないかと思います、契約の問題は別にして。なので、エルヴィス自身の問題であるんですけど、申し訳ないが、私はそれらを全部大佐のせいにすることにしています。エルヴィスは責めたくないので。

 

さて、映画についてです。

とりあえず長い。2時間40分。確かに歌の部分を省略しないと多少長くなります、ミュージカルは。しかし、それでも長い。それは視点が散っているからでしょう。最初、大佐の回想シーンから始まる展開で、物語自体大佐が引っ張っていくように思わせますが、途中でエルヴィスに視点が移る。また、大佐の語りが入る、みたいに入りくってしまって分かりにくい。俳優陣は良い。トム・ハンクスは非常に上手くて憎たらしい。エルヴィスを演じたオースティン・バトラーは素敵だ。歌も相当に上手い。一部彼の歌声が使われていた。サントラにも彼のクレジットでエルヴィスの曲のカバーがあった。ここは意見が分かれるところでしょうが、バトラーの歌はいらなかった。彼のエルヴィス風歌い回しは見事です。それでも、やはり、本物のエルヴィスの声とのギャップは大きいので、全部エルヴィスの声で良かったのではと感じました。彼が普通にエルヴィスのカバーアルバムを出したなら、圧倒的に支持しますが、サントラとなると、そこは難しいところですね。エルヴィスの歌は特別なんですよ、特にライブでは。空気が一変するような歌です。あれはちょっと真似出来ない。また、映画に散りばめられてる現在の売れっ子ミュージシャン達のエルヴィスカバーは一切要らないです。商業的には必要なのでしょうが、エルヴィスの音楽だけで良かった。

 

そんな訳で、全体的に腹立たしい展開が多い映画でしたが、やはり、この映画にも素敵なシーンがありました。エルヴィスとブルースのB・B・キングが呼び合うシーン、エルヴィスがキングをBBと呼び、キングがエルヴィスをEPと呼ぶ。いいですね。心なごむシーンだ。キングがエルヴィスに言うんです、「自分は好きなところへ行って、好きな歌を歌うだけ。嫌われたら、別のところへ行けばいい」。その通りだ、だから、B・B・キングの歌はいつだって力強い。エルヴィスにもそういう自由があったらな。ちょっとだけそんな風に思いました。

 

それでは、また。

 

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