ムー大陸の音楽探検

ボカロP・ムー大陸が紹介する音楽のアレやコレや

裏方たちに栄光あれ①

ムー大陸です

 

前回、「名曲たちの成績表④〜California Dreamin'」の記事で、この曲の演奏はザ・レッキング・クルーというスタジオミュージシャンたちのよるものであると書きました。今回はそのザ・レッキング・クルーについて書こうと思ったのですが、その前に、今回はこうしたバックのミュージシャンに注目が集まるきっかけとなったザ・ファンク・ブラザーズについて触れて、話を始めたいと思います。

「栄光のモータウン」というドキュメンタリー映画がありまして、その中で取り上げられたのがザ・ファンク・ブラザーズです。公開当時かなり話題になったと記憶してます。その影響でDVD買いました。映画の冒頭、音楽ファンにインタビューをします。割と音楽に詳しいと自負するファンたち、特にマーヴィン・ゲイスモーキー・ロビンソン、ザ・シュープリームスといったモータウンのアーティストが好きなファンです。「スモーキー・ロビンソンの曲を演奏したのは?」この単純な質問に答えられない。「ミラクルズ、いや違うな、分からない」そんな感じです。実は多くのモータウンのヒット曲を演奏し、そのサウンドを支えていたのがザ・ファンク・ブラザーズと呼ばれるスタジオミュージシャンの集団です。彼らの多くはジャズミュージシャン上がりで、テクニックとセンスに秀でた職人でした。映画の宣伝文句は確か「彼らが演奏したNo.1ヒットはエルヴィス、ザ・ビートルズストーンズの合計よりも多い」だったか。

60年代のモータウンはヒットファクトリーでした。もちろん、一組のアーティストではないが、次から次にヒットを量産していました。そのため、スタジオミュージシャンたちはスタジオに待機し曲が到着するのを待って、それを演奏するのです。残念ながら、彼らは演奏者としてクレジットされなかった。恐らく、演奏者としてのギャラは十分払われたでしょうが、彼らは栄光とは無縁でした。

それだけなら珍しくないのかも知れません。後でお話しするザ・レッキング・クルーも同じような待遇でした。アメリカの音楽界の悪しき風習のようなところでしょうか。しかし、他に比べて極めて問題なのはザ・ファンク・ブラザーズに限っては単なる演奏者ではなかったという点です。

スタジオで曲を待つ彼らのところへやって来るのは歌メロだけだったそうです。全てがそうではないでしょうが、多くは彼らがその場でアレンジして仕上げていたのです。名曲「My Girl」はスモーキー・ロビンソン作曲、歌メロは文句なしですが、彼はあの最高としか言いようのないギターのイントロもそれとベストマッチのベースリフも作っていないのです。あのギターのイントロを自らのアイディアで弾いたのはロバート・ホワイトというギタリスト。

ところが、映画の中で彼はこんな事を言っていた。彼が食事をしている時に、この曲がかかって、ウェイターに「このギターのイントロは俺が弾いたんだ」と言おうとした。でも、彼は止めた。何故言わないのか?と一緒に食事をしていた友人に尋ねられると、「頭のおかしい奴と思われるだけだ」と言って静かに笑った。つまり、どうせそんな事言ったところで信じてもらえないという事です。

多分、私がウェイターだとしても、信じないでと思います。「へぇ、じゃぁ、何でアンタはここにいるんだい?」ってところです。何て言う事でしょう。あの名フレーズを弾いたギタリストが栄光に浴することが出来ないどころか、嘘つき扱いされてしまう現実。あの「My Girl」のギターは少なく見積もって編曲者、しかし、あのギター無しに「My Girl」が成立するのかと問えば、それは私的にはNoであるから、共同作曲者とするのが相応しいのです。

「My Girl」

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他にも同様のケースがたくさんあります。

ザ・シュープリームスの「You Can't Hurry Love(恋はあせらず)」、やザ・フォー・トップスの「I Can't Help Myself」はあのベースライン無しに成立するのか?No No Noである。作曲者はどちらもホーランド=ドジャー=ホーランドだが、このベースはザ・ファンク・ブラザーズの中心的存在だったジェイムズ・ジェマーソンというベーシストの手によるもの。このベースなどは正にモータウンサウンドと言われるそのものです。これなどは作曲者に名を連ねるどころではなく、一つのムーブメントを作ったに等しい。この映画が2002年に公開され、彼らは結果的にグラミーの特別功労賞を受賞したが、ジェイムズ・ジェマーソンは既に故人でした。

「You Can`t Hurry Love」

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「I Can`t Help Myself」

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60年代当時からザ・ビートルズは彼らに注目していました。ポール・マッカートニーはその名前を知らぬまま、「モータウンのやつ」と言ってリスペクトし、ライバル視していたとか。さすがですね。確かにザ・ビートルズってモータウンのカバー多いです。

私なんてこの映画を観るまで、誰が演奏しているかなんて気にも留めてませんでした。恥ずかしい限りです。今更ながら偉そうにこんな文章書けたもんではないですが、何もしないよりはマシと言い聞かせ、話をさせて頂きました。

まだ、ご覧になってない方は是非「栄光のモータウン」観てみて下さい。

次回はこれまたスタジオミュージシャンの集団、ザ・レッキング・クルーの話を。

それでは、また。

 

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新曲出しました。是非聴いて下さい!

「混沌(カオス)」

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