ムー大陸の音楽探検

ボカロP・ムー大陸が紹介する音楽のアレやコレや

「必殺シリーズ」の音楽②

ムー大陸です

 

 

前回に引き続き、「必殺シリーズ」の音楽の話です。

前回、音楽を楽しむためにはドラマを見た方がいいとも書きました。

muutairiku.hateblo.jp

サウンドトラックですから、当然本編を見るべきなのは言うまでもないことです。今回は「必殺シリーズ」の音楽をより楽しむためにドラマについて書きたいと思います。

 

ドラマの内容、コンセプトについて前回サラッと説明しました。

金を貰って悪党を殺す殺し屋たちの物語と書きました。大体、殺し屋って金を貰って人を殺すものです。ただ、それって正義の味方じゃありません。いくら殺すのは悪党だって言っても、殺し屋自体が悪党ですから。

はい、そこが核になります。

悪党を殺す大悪党、それがこのシリーズの殺し屋です。決して正義の味方ではないのです。時代劇というのは勧善懲悪の作品が多い。正義の味方が困った人たちを助けて悪党を懲らしめる、めでたしって作品がほとんどです。でも、このシリーズの殺し屋たちは、困った人がいても、金を貰わない限り決して殺しはしません。

 

当初、放送した朝日放送は大人気の裏番組「木枯し紋次郎」に対抗するため、時代劇に時代劇をぶつける奇策を取りました。その際、主人公をダークヒーローという今までにない設定にして勝負をかけたのです。原作は池波正太郎氏です。池波氏も「これをドラマにするなんてよくやるわ」と驚いたそうです。

 

そうして制作された第1作「必殺仕掛人」。浪人西村佐内に林与一氏、針医者藤枝梅安緒形拳氏というキャスト。この二人の遭遇する場面は見物です。梅安は凄腕のベテラン仕掛人です。一方、左内は清廉潔白な浪人で妻子持ちだが、人を殺したくて辻斬りをするという暗黒面を持ちます。これが仕掛人となるのが一回目。梅安はダークヒーロー的必殺の殺し屋の典型で、いつでもクールで、金がなければ決して動こうとしないプロフェッショナル。左内は辻斬りという病以外は人情味がある武士ですから、そんな梅安とぶつかることもある。この構図について制作陣は誰も意識はしていなかったでしょうが、殺し屋のあり方というのは後々活きてきていると私は感じています。勝手な見立てですが、ここが注目ポイントです。

必殺仕掛人」オープニングナレーション

https://drive.google.com/file/d/1bPuZaWgtncNdON4TzQv_b-c6CohQhi5I/view?usp=drive_link

 

第2作「必殺仕置人」からは池波原作から離れたテレビのオリジナルシリーズになります。ここで後のシリーズの顔となる藤田まこと氏扮する中村主水が登場します。また、梅安から続く坊主頭の殺し屋、山崎努氏扮する念仏の鉄が登場。彼らは第一回目に初めてこの稼業に足を踏み入れる設定でした。最初は義憤に駆られて人を殺す、そして、それを続けていくことにするというものでした。「必殺仕掛人」の梅安がプロ中のプロだったのに比べ、素人っぽさが残る殺し屋でした。全て偶然でしょうが、この設定がまた後で効いてきます。

必殺仕置人」オープニングナレーション

https://drive.google.com/file/d/1dw4q93x82P32CPEGyFb1gkMjXFMXa8LT/view?usp=drive_link

 

その後もシリーズは続きますが、第3作「助け人走る」の途中から視聴率が低迷し、第4作「暗闇仕留人」では評判の良かった中村主水が復活します。シリーズの顔も計算ではなく成り行きで復活したのです。このシリーズは偶然が全ていい方向に向かっています。上手くいくときはそういうものかも知れません。この「暗闇仕留人」で石坂浩二氏扮する糸井貢が登場。彼は元蘭学者でインテリなのです。妻の病気治療のため殺し屋をやっている。その彼はインテリだけに仕留人の仕事に様々な疑問を呈するのです。「俺たちが悪党を殺して世の中が少しでも良くなったか」「俺たちが殺した悪党にも家族や恋人がいたんじゃないのか」などなど。これらもストーリーの展開上脚本家が書いたセリフだったのでしょうが、これがそのまま制作陣に対する疑問、シリーズへの問いかけとなるのです。そして、ここへ来てようやく制作陣も気付くのです、このシリーズは単なる活劇ではない、人殺しの業を描いたドラマであるということに。

 

「暗闇仕留人」オープニングナレーション

https://drive.google.com/file/d/1dieTlpMMF4GMwLgFJAbxdraEx2l55y6k/view?usp=drive_link

 

この後、シリーズは中村主水が登場するシリーズと登場しないシリーズをほぼ交互に繰り返していくようになります。主水が登場しないシリーズも面白いのですが、人殺しの業を描いていくとするならば、シリーズを通して登場し、変化、成長していくキャラ・中村主水の存在は実に効果的で、内容の濃いものになってきます。念仏の鉄と出会い、殺しを始める。糸井貢と出会い、殺し屋の業に気付く。その後もシリーズを重ねるごとに新たな殺し屋と出会い、新たな業を背負い、殺し屋として成長していくんです。最初は勢いで始めた素人がプロになり、どういう殺し屋になっていくかを見ることが出来る。これは非常に面白いです。

 

「必殺仕置屋稼業」オープニングナレーション

https://drive.google.com/file/d/1yqtoHt0Ggj8iAAPQ_6t92Hw-8Csz3mDo/view?usp=drive_link

必殺仕業人」オープニングナレーション

https://drive.google.com/file/d/1umSlMWhH7lfZSY5hJMt7qI2ld3OHqV1u/view?usp=drive_link

 

第6作「必殺仕置屋稼業」、第7作「必殺仕業人」で、市松、赤井剣之介という個性的な殺し屋と出会い、第10作「新必殺仕置人」で念仏の鉄が帰って来ます。殺し屋を一緒に始めた仲間です。お互い殺し屋として成長しての再会です。この「新必殺仕置人」の最終回がある意味中村主水のシリーズの最終回と位置付けていいと思います。シリーズ史上最高の最終回という呼び声も高いです。ここは必見です。

 

「新・必殺仕置人」オープニングナレーション

https://drive.google.com/file/d/1kbic8kuOo3NZgJmIz40mUMpoCyuojPps/view?usp=drive_link

 

その後第12作「必殺商売人」に主水はまたも登場。これは最終回後の後日譚と考えています。つまり、最終回では描かれなかった、結局、中村主水はどんな殺し屋になったのかが描かれていると考えています。ここでは徹底的にクールな殺し屋になっています。妻が妊娠し、もうすぐ子供が生まれてくるという設定です。普通ならそれを機に足を洗うところですが、子供が生まれるんで金が要るとの理由で殺しを始めるのです。そんな恐ろしい男になっています。タイトルには江戸プロフェッショナルとついています。これは制作陣からのメッセージと捉えています。この主水が辿り着いたクールな殺し屋像は第1作の藤枝梅安を思い出させます。第1作とここで繋がってくると感じています。

 

ここで終わっていれば良かったのですが、視聴率なども関係し、中村主水はまたも登場します。それが多くの人がご存じの第15作「必殺仕事人」です。この作品で番組は大きくバラエティ路線に舵を切り視聴率は劇的に回復、第30作まで続くロングランになりました。劇場版も多く作られました。ビジネスとしてはその路線は大成功だった言えるでしょうが、それらは既に殺し屋の業を描くドラマではなくなっていました。なので、そこは見なくてもいいとは言いませんが、第12作目までを見た後でいいと思います。必殺シリーズの熱烈なファンは必殺仕事人のシリーズを仕事人シリーズと呼んで、過去の作品と分ける傾向にあります。

 

こういう勧め方は本意ではないのですが、多くの人に楽しんでもらいたいので敢えて書きます。どのシリーズも第一回と最終回は必須で見て下さい。それ以外は基本的に同じことの繰り返しですから、当たりはずれはあるものの2,3回ピックアップしてくれればいいと思います。そのようにしてシリーズを見ると、音楽的には第1作から第3作までがピークで、第4作からは殺しのテーマ曲が消えてしましますが、ドラマ的には第4作で殺し屋の業に目覚めますから、大きく変わることに気付きます。第4作から第10作あたりのドラマと結びつけると、音楽も楽しく聴けるでしょう。今ではU-Nextなどで配信されています。是非一度見てみて下さい。

それでは、また。

 

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新曲公開中です!是非聴いて下さい♪

「春に死のう」

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