ムー大陸の音楽探検

ボカロP・ムー大陸が紹介する音楽のアレやコレや

裏方たちに栄光あれ②

ムー大陸です

 

前回はザ・ファンク・ブラザーズの話をしました。引き続き今回は同じスタジオミュージシャン集団のザ・レッキング・クルーについて話します。

ザ・ファンク・ブラザーズモータウンという一会社の内部の話だったのに対し、ザ・レッキング・クルーはアメリカのポップス界全般に渡ります。50年代後半から70年代中頃までアメリカのポップスを裏で支えた演奏家集団が彼らでした。もちろん、彼らはグループではありません。名うてのスタジオミュージシャンたちを総称としてそう呼んだわけで、時期によってメンバーも移り変わります。

彼らもザ・ファンク・ブラザーズ同様その名が演奏者としてクレジットされる事はなく、栄光とは無縁でした。ただ、それは確かに問題でありますけど、ザ・レッキング・クルーについては他に大きな問題点があると感じています。

ザ・ファンク・ブラザーズが演奏だけではなく、編曲あるいは実質的な共同作曲者と言っても過言ではない働きをしたのに対し、ザ・レッキング・クルーは演奏者だったと考えています。もちろん、ある程度荒いものを形に仕上げて行く作業だったという証言はあるので、センスが問われる部分はあったでしょう。しかし、一つの会社でモータウンサウンドという色があるのと違って、多岐にわたるアーティストとの共演においてはその場その場で演奏が変化するはずです。そこは現場を仕切るプロデューサーの指示に従っていたと考えています。

ザ・モンキーズは自分たちで演奏していない、そんな話を聞いたことがあると思います。そうです、それを演奏していたのが彼らです。よくご存知の「Daydream Believer」も。彼らは演奏出来ない作られたアイドルなんだと捉えてしまいがちですが、そうではないのです。実はザ・ビーチボーイズも自分たちで演奏していないのです。ザ・ビーチボーイズはロック史に残る名バンド、それが演奏出来ない?いや、違うんです。出来ないのではなく、してないんです。スタジオバージョンつまり、レコーディングで演奏するのはスタジオミュージシャン、ライブでは本人たちがそれをカバーするという事です。それがアメリカ音楽界の半ば常識だったのでしょう。ザ・モンキーズが「演奏出来ないわけじゃない」という言い訳してました。あれもあながち嘘じゃないのです。

当然、ザ・ビーチボーイズのレコーディングに際しては、ザ・ビーチボーイズのブレイン、作曲者兼プロデューサーであるブライアン・ウィルソンが隅々まで指示を飛ばし、サウンドを作り上げますから、ザ・レッキング・クルーは演奏者です。そこはザ・ファンク・ブラザーズとは違います。あるいは、サイモン&ガーファンクルの作品、「Mrs.Robinson」のバックも彼らが務めています。サイモン&ガーファンクルはデュオですから、バックは必要です、でもサウンドコンセプトはポール・サイモンによるものです。

フィル・スペクターのガールズグループ、例えば、ロネッツの「Be My Baby」も彼らの仕事。

でも、サウンドイカーは当然フィルです。

その他、フランク・シナトラバーブラ・ストライサンドのようなソロシンガーのバックは当然必要です。その場合も各々のプロデューサーがサウンドメイクを行う。

つまり、ザ・レッキング・クルーにおける問題は彼らの待遇というより、アメリカ音楽界の悪しき慣習です。ソロシンガーやコーラスグループならまだしも、バンドまでも自分たちで演奏しないというシステムが常態化しているということ。ザ・ビーチボーイズは演奏してないのだから、アルバムのクレジットは嘘ということになります。ただ、ザ・レッキング・クルーは随分と稼いだと聞いています。何しろ引っ張りだこで。ですから、クレジットの問題はあるとしても、彼らはザ・ファンク・ブラザーズほどには不遇ではなかったと思います。

「Daydream Believer」

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「Mrs.Robinson」

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「Be My Baby」

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70年代に入ると、徐々にアメリカ音楽界も変わっていきます。イーグルスやドゥービーのように自分たちで演奏したいという(イギリスでは当たり前、というかアメリカ以外では当然)実力派バンドが登場、またデジタル演奏の発達によりコストの高いスタジオミュージシャンの需要が落ちて、ザ・レッキング・クルーの時代は終焉を迎えます。

ブライアン・ウィルソンの伝記映画「ラヴ&マーシー」の中にザ・レッキング・クルーが登場します。もちろん、俳優さんが演じてる。ドラマーがブライアンに言うんです、「俺たちは全てとやった。エルヴィス、シナトラ、サム・クックフィル・スペクター。でも、あんたはその誰よりもぶっ飛んでる」。その言葉を聞いてブライアンは喜びます。大好きなシーンです。そうです、彼らは全てとやったんです。細かく調べてみれば、あれもこれもザ・レッキング・クルーということも珍しくないでしょう。

是非彼らを扱ったドキュメンタリー映画「レッキング・クルー 伝説のミュージシャンたち」を見て下さい。2008年の作品です。2002年の「栄光のモータウン」の影響を受け制作したのでしょうか。完成まで時間がかかったらしいので、時期的にはそう思えますね。また、ブライアンの伝記映画「ラヴ&マーシー」も興味があれば。

それでは、また。

 

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