ムー大陸の音楽探検

ボカロP・ムー大陸が紹介する音楽のアレやコレや

映画「砂の器」の音楽①

ムー大陸です

 

 

今回は映画「砂の器」の音楽がテーマです。

砂の器」は松本清張氏の推理小説です。小説が発表されたのは1960年から61年。それが野村芳太郎監督、橋本忍山田洋次脚本で1974年に映画化されました。その映画は原作小説を大きく改変、主題から根こそぎ変わっています。その後「砂の器」は何度も映像化されますが、それは基本的に原作小説ではなく、1974年の映画をリメイクする形となっています。

 

それほど1974年の映画は素晴らしい出来で評判が高い。もし、まだ見ていなくて、興味を持っている方はご覧になった後に読んで頂きますようお願いします。全部書いてしまいます。

 

映画「砂の器」予告編

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ストーリーはそれほど複雑ではありません。

東京・蒲田で殺人事件が起きます。被害者は三木謙一という老人。今西、吉村両刑事は東北弁と「カメダ」という言葉を糸口に徐々に事件の真相に近づいていきます。

 

そして、最終的に辿り着いたのは新進気鋭の作曲家・和賀英良。彼はかつてハンセン病に罹患した父親と村を追われ、放浪の旅の果てに三木謙一が巡査をしていた奥出雲の「カメダケ」周辺にやって来ました。

時代は昭和10年代。無らい運動、つまり自分の村にはハンセン病罹患者は入れさせないというのが常識でしたが、人情味の厚い三木は父親を療養所に入院させ、少年(和賀)を我が子として引き取ろうとします。

 

ところが、その子は間もなく三木のところを飛び出し、行方不明に。彼は大阪に辿り着き、和賀夫妻が営む自転車店で小僧として働くようになる。空襲で和賀夫妻が亡くなると、戦時の混乱に乗じて和賀夫妻の子供・英良として戸籍を得ます。その後苦学して音楽家として成功、現在、前大蔵大臣の娘との結婚、新作「宿命」の発表を控えている。

 

そんな和賀の前に三木謙一は現れる。表面的には不都合な過去、戸籍詐称などが露見する事を恐れて、口封じのために彼を殺したという事件であります。

 

さて、犯人である和賀英良が音楽家でありますし、この映画では音楽が重要な役割を担っています。映画のラスト45分、今西刑事が捜査会議で上記の事件の概要を説明します。それと同時に和賀英良の新曲「宿命」のコンサート、そして、過去の村を追われた親子の放浪の旅が重なります。この45分間、ほぼその「宿命」という曲が流れます。

「宿命」 東京交響楽団

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和賀は映画の中で言います。「宿命」とは生まれたこと、生きることだと。そして、父との因縁こそが彼にとっての宿命なのでしょう。今西刑事は、和賀は音楽の中で父親に会っていると言います。そうなのでしょう。

 

そんな位置付けの音楽です。

これが素晴らしい。必ずしも美しいとは感じないのですが、映画にはピッタリです。作曲は菅野光亮氏、音楽監督芥川也寸志氏、演奏は東京交響楽団です。

 

私はこの映画が大好きです。この映画より好きな映画は何本もありますが、最も泣ける映画と言えば、「砂の器」です。この「宿命」に乗って親子の放浪の旅の場面が映ると、どうしても泣いてしまう、何度見ても。

 

この曲、出だしはピアノのソロです。その後、オーケストラが入るところで、巡礼の旅の親子が画面に登場します。各地で追い払われたり、いじめにあったり。何と言っても泣けるのは、少年和賀(本名は本浦秀夫)が同世代の子供達が楽しそうに学ぶ学校の校庭を見つめるシーン。あれはズルい。

また、風景が美しい。北陸だと思うんですけど、荒涼とした感じが堪らないです。

 

今では音楽を聴いただけでどの場面か分かってしまいます。実に映画とよくシンクロしていると思います。

実はこの「宿命」という曲は原作には登場しません。もちろん、小説ですから音楽は鳴りませんが、「宿命」というタイトルも出て来ませんし、そもそも親子の宿命を大きなテーマとして取り扱っていないのです。

なので、これは映画オリジナル。この脚本のために書き下ろされたものです。

 

次回はその原作と映画の違い、ストーリーの核の部分、併せてその場面における音楽について話します。

それでは、また。

 

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「春に死のう」

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