ムー大陸です
以前友人からこんなことを聞かれました。
「ジャズを聴きたいんだけど、
何か良いのない?」
分かりますね。普通に生活しているとジャズに出会うなんて事はそうはありません。何しろヒットしてませんから、自然に耳にする事は無いんです。今ヒットしている音楽と繋がっていれば、ジャズへ手を伸ばすこともあり得ますが、中々影響を感じませんよね。
しかし、その友人は素晴らしいことに、わざわざジャズへの扉を開こうとしたんです、重い重い扉をです。まぁ、普段から本や映画についても色々掘り下げてる奴だったので、不思議ではありませんでしたが。そんな時、彼は人よりちょっとだけジャズを知ってそうな私に声をかけてくれたわけです。これはちゃんと答えなければいけません。
とは言え、ジャズで何がいい?って凄いアバウト。おぼろ気過ぎて答えにくい。私は先ず言いました。「ベニー・グッドマンとかデューク・エリントンなんかのビッグバンドがいいんじゃない?」。はい、定番です。耳馴染みの曲もあるし、ソロもある、ジャズの魅力が詰まっています。
ところが、友人は不満そうでした。ビッグバンドは少しは聴いてことがあるらしい。そして、こう言いました、
「いや、そういうのじゃなくて、
普通のジャズ」
はい、来ました。「普通のジャズ」。当たり前なんですけど、ベニー・グッドマンもデューク・エリントンも普通にジャズです、間違いありません。
ただ、彼が言わんとする事を汲み取って言うならば、そういう大人数でやる派手な音楽じゃなくて、いいとこ4、5人でやるもうちょい静かなもの。ショットバーとかに流れてるといい感じのジャズ、そんなところです。それが一般的には「普通のジャズ」なのでしょうか?ドラマなんかのイメージとかもあるかも知れません。
さて、私はその質問にそれほど深く考えずに、
「なら、セロニアス・モンクだね」
と答えました。
友人は喜んで、モンクを聴いてみると言い、そこで話は終わりました。確か後日モンクを聴いて、気に入ったはずです。
このやり取りで私は自分で驚きました。
友人が尋ねた「普通のジャズ」について、私は自然とセロニアス・モンクと答えたのです。つまり、セロニアス・モンクこそが私にとって普通のジャズである事を意味します。大好きなチャーリー・パーカーやマイルス・デイヴィスではなく、モンクを選んだことに自分でも大変驚きました。
何となく、誰に言われた訳でもなく、ジャズの正統って作曲するミュージシャンを選びます。ジャズの歴史からして私の中のビッグバンド時代の正統はデューク・エリントンです。その後、モダンジャズというか、今回で言うところの普通のジャズの時代になり、その正統はセロニアス・モンクに引き継がれたと思っています。デュークに比べてモンクは地味と言うか内省的と言うか、デュークが陽ならモンクは陰みたいなところがあるのです。正統がそう変わったからこそ、ジャズ自体がそう変わった、こんな風に思うのです。いや、これは私の勝手な思い込みで、誰からも賛同を得た事は無いですよ。一人の音楽家だけが正統で、全てが変わるなんて現実的ではありませんから。
そう分かっていても、モンクこそが正統という思いは今でも消えません。その事をあらためて考えさせられたのが、上述友人からの質問でした。そんな訳で今でもその質問の事は忘れません。皆さんも是非モンク聴いて下さい。ジャズっぽいジャズって思いませんか?
セロニアス・モンク「Round Midnight」
私のYouTubeチャンネルもよろしくお願いします。
楽曲公開しています。是非聴いて下さい♪
「あやかし」
「Evergeen」