ムー大陸です
今回のテーマはレコード大賞です。
「その年最も活躍したアーティスト、もしくは評価すべき作品」を讃えて、賞という形で栄誉を与える。
これは音楽に限らず、映画、舞台、テレビなどあらゆる分野に浸透した手法です。ただ、近年、この賞というものの存在価値が薄れているように思います。特にかつては日本歌謡界最高の権威レコード大賞の凋落ぶりは顕著です。そこでレコード大賞の必要性について考えたいと思います。
賞がありがたいのは、そこに権威があるからです。その権威は歴史です。歴代の受賞者がその時々に本当に最も活躍したアーティストであった、最も売れた楽曲だった、あるいは傑作として評価された作品だったなどという事実を積み重ねて来たからこそ権威が生まれる。歴代の受賞者たちが間違いなくその年最も活躍していたとすれば、この賞を獲ることは彼らと同じように一番になることだ、とアーティストや世間が納得してくれれば、それが権威です。仮に名の通った企業が大枚をはたいて賞金を出し権威付けをしようとしても、受賞者に納得性が無いと権威は生まれません。
では、最近のレコ大に納得性はあるのでしょうか?中々難しいと思うんです。このレコ大、かつては日本歌謡界の頂点でした。12月31日レコ大を獲ってNHK紅白に出る、これこそ歌手の究極の栄光でした。しかし、時は移り、その権威は見る影も無い程に失墜しました。
何故失墜したか?については色んな原因があると思いますが、最もシンプルに考えれば、レコード大賞が一番ではなくなったからだと思います。
レコ大にも様々な歴史があります。最初は内輪の小さな賞だった。それが10回超える頃には大きな権威となる。実力がある歌手がその年にヒットを出す、それもミリオンクラス、そのレベルが必須でした。演歌やムード歌謡などが主流ではあったが、GSが売れればブルー・コメッツが大賞。70年代吉田拓郎、小椋佳などのニューミュージック系のアーティストの作品にだって惜しげもなく大賞を与えました。ピンク・レディーの人気絶頂の年には実力派とは言い難いアイドルであっても大賞に選びました。勢いのある頃のレコ大は権威であっても、一応自らの権威を理由に排除をしなかったんです。
もちろん、権威主義の芽はあって、日本一売れた「およげ!たいやきくん」は大賞を獲っていない。子供向けと位置付けたのでしょう。あるいは、歌謡曲歌手への楽曲提供ではなくフォーク系のアーティスト自身の大ヒット、例えば、「神田川」なども賞には縁がない。歌謡曲の歌い手ではないとの思いでしょうか。レコード大賞はこの2曲を無視しました。また、歌謡界的に異端なものは大賞ではなく特別賞や大衆賞という形で評価を与え、認めている体をとるような姑息な手段も取ってました。加山雄三氏の「君といつまでも」は売上ではダントツでしたが、特別賞に。ロックだからでしょうか。
でも、そうした体制にも限界が来ます。歌謡曲自体が衰え、かつて異端としていたニューミュージック、更にはロックバンドが日本の流行歌の中心になってしまった。そうなると、最も売れたアーティストがそもそもレコ大を欲しがらない。レコ大の側も出来れば歌謡曲の中から相応しい人に与えたいと思うところもあったかも知れません。そうしてる内に、レコ大受賞者よりも売れてるアーティストがたくさんいるのが当たり前、貰ってくれる人の中から選ぶようになり、益々売れてるアーティストが欲しいと思わなくなる。この悪循環に陥りました。
ここは本来、貰ってくれなくても、本当に相応しい人にあげとけば良かった。与えたけど、受賞拒否としておけば良かったと思うのです。レコ大=一番を崩さなければ、時を経てまた欲しがる人が現れたと思います。受賞拒否すらその時代の風潮、「ああ、この頃は受賞拒否多かったんだよ」みたいに後年歴史の一部になり得た。
でも、レコ大=一番を捨てた、それは権威を捨てたんです。レコード大賞に権威があるんじゃないんです、やはり歴史にあるんです。
米国のグラミー賞は積極的に賞を与えにいきました。80年代ヒップホップが台頭、この時ヒップホップ部門を強化し賞を増やしました。辟易するほど細分化していきました。当然ですが、ロックもヒップホップも反逆の音楽という面があるので、欲しがらない人はいます、欲しくても、欲しがったらカッコ悪い世界なんで。それでも、あらゆる音楽を網羅する意気込みでヒップホップ部門を設けて、売れっ子の中から受賞してくれる者がいたら成功です。そのうち徐々に抵抗が薄れていき、今に至ります。現在のヒップホップの隆盛を考えた時、もし、80年代にレコ大のような閉鎖的な方針をとったら、音楽シーンとかけ離れた賞になり、権威は大きく失墜していたでしょう。とは言え、グラミー賞もかつてほどに権威はありませんけど。
では、今後はどうなるのか?
もちろん、そんな事私には分かりません。
ここまで引っ張って申し訳ありません。
ただ、賞=一番、とかチャートトップ=一番という図式が通じにくい時代に入って来たと思うんです。音楽好きとして今ほど過ごし易い時代は無いですよ。好きな音楽が何でも安く聴ける。もっと言うと、売れてないアーティストの作品、素人の作品、キワモノ、問題作、下手くそ、こんなのでも入手可能、その中から自分の好きな音楽が見つかるなんて普通にあると思いますよ。だから、ボカロPやってられる訳です。
そう考えると、これが今年の一番です!みたいのは、一時のちょっとした話題程度にしかならないと痛感します。そう言えば、昨年のグラミー賞覚えてないな。
個人的にはグラミー賞とかもういりません。ましてやレコード大賞はもう邪魔なだけ。今のレコ大は本当に凄かったかつての受賞者まで汚してしまう危険性があります。直ちにやめるべきです。
色んな人の「私の一番はこれです」なんていうのをいくつも見た方が遥かに役に立つし面白い。私のブログも少しは役に立てれば良いけど。
それでは、また。
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「鬼火」
「あやかし」