ムー大陸の音楽探検

ボカロP・ムー大陸が紹介する音楽のアレやコレや

「必殺シリーズ」の音楽①

ムー大陸です

 

 

パララー パッパッパッパーラッパッパ パララー♪

というトランペットのファンファーレで始まるテーマ曲を聴いたことがある方も少なくないと思います。

 

あれは「必殺シリーズ」の音楽です。

 

「必殺!」

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必殺シリーズ」とは1972年に放送開始、その後30作に渡って制作されたテレビ時代劇のシリーズです。金を貰って悪党を殺す殺し屋たちの物語です。諸事情により必殺の文字がタイトルから外されたこともありましたが、殆どがタイトルに必殺の文字を冠していることから「必殺シリーズ」と呼ばれます。一旦昭和のシリーズは終了しましたが、平成になって復活、最新では2023年、現在でもスペシャル番組が不定期に作られている人気のシリーズです。その記念すべき第1作「必殺仕掛人」のために書き下ろされた殺しのテーマ曲が上記のパララー♪であります。

 

その音楽を担当したのは主に平尾昌晃氏です。ロカビリー歌手として活躍し、その後作曲家へ転身。多くのヒット曲を生み出した歌謡曲の代表的作曲家の一人です。そんな平尾氏ですから、多大なる音楽的功績を残していますが、私は彼のどんなヒット曲よりも、この「必殺シリーズ」の音楽こそが平尾氏最大の功績だと信じています。

 

必殺の音楽の特徴は一言で言えばマカロニ・ウェスタンです。

必殺シリーズ」が企画された頃人気だった西部劇、それもアメリカで作られたジョン・フォードのような本格的な西部劇とは一線を画したもの。主にイタリアで制作された、いわゆるスパゲッティ・ウェスタンもしくはマカロニ・ウェスタンの音楽を参考にしています。特に、後に巨匠となる若き日のエンニオ・モリコーネの作品の影響が大です。ところどころスパニッシュというかフラメンコの臭いもしますが、それもマカロニ・ウェスタンのフィルターを通したものを取り込んだ感じです。

 

「西村左内」

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併せて、五木ひろし氏を育てた平尾氏ならではの演歌の要素が加わります。

必殺シリーズ」のエンディングテーマは大抵が演歌です。劇中これを様々な形でインストアレンジしたものを使用しています。これが前述のマカロニ・ウェスタンと混ざり合って独特な雰囲気を醸し出しています。

 

シリーズ第1作は「必殺仕掛人」です。

最初だからだと思いますが、演歌色よりマカロニ・ウェスタン色が強いです。「必殺!」と名付けられた上述のテーマ曲は第1回目の放送では番組のエンディングテーマとして使われ、劇中殺しの場面では使われていません。模索しながらのスタートだったのでしょう。回を重ね、「必殺!」が殺しの場面に使われるようになり、併せて、それに歌詞をつけたバージョン「荒野の果てに」が正式にエンディングテーマとなります。それにより多少歌謡曲要素が入って来ます。そして、「必殺!」は後々のシリーズや劇場版で何度も繰り返し使われ、シリーズを代表するテーマ曲となりました。

 

「荒野の果てに」山下雄三

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続く第2作は「必殺仕置人」。

第2作となると、最初から殺しのテーマ曲とエンディングテーマが分離します。殺しのテーマ「仕置のテーマ」は前作の「必殺!」と同様のアップテンポなマーチ風の曲。モリコーネの「夕陽のガンマン」を思わせます。一方、エンディングテーマ「やがて愛の日が」は平尾氏お得意の演歌バラッドです。劇中そのインストアレンジが効果的に使われ、マカロニ・ウェスタンと演歌が混然一体となっています。いいバランスです。

「仕置のテーマ」(動画はないです)

https://drive.google.com/file/d/16aKLEkcaS_N_dKNjlruvYpR4vE4TNfxH/view?usp=drive_link

「やがて愛の日が」

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第3作「助け人走る」になると、再び殺しのテーマとエンディングテーマが同一になります。どちらから先に作られたかは不明ですが、インストバージョン「紫煙立ち上ぼる時~殺しのテーマ」は第1作「必殺!」からの流れを汲む一曲で、アップテンポなマーチです。従って、同じ曲に歌詞がついた「望郷の旅」というエンディングテーマも前作とうって変わって快活な曲になりました。演歌バラッドはお休みです。ここまでが音楽的には「必殺シリーズ」のピークと言えるでしょう。

 

紫煙立ち上る時」

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「望郷の旅」森本太郎とスーパースター

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第4作「暗闇仕留人」において転機が訪れます。

西崎みどり氏が歌ったエンディングテーマ「旅愁」が大ヒットしたのです。また、最初から劇中使用される殺しのテーマは作られず、この演歌バラッドである「旅愁」のインストアレンジが殺しの場面で使われました。ここで初めてマーチ風の殺しのテーマが消えてしまい、エンディングテーマのインストアレンジがその座に就くのです。確かに、演歌のインストアレンジでもドラマの盛り上がり的には問題ないということを確認したとも言えます。ただ実情としては、毎回マーチ風の殺しのテーマ曲を用意する材料が尽きたと考えています。

旅愁」西崎みどり

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「仕留て候」(「旅愁」インストアレンジ)

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従って、その後は殺しのテーマとして新曲が導入されることは稀にありましたが、基本的にはエンディングテーマのインストアレンジが主流になってきます。もちろん、マーチ風のアレンジを施し、その中から傑作も生まれることもあります。第10作「新必殺仕置人」では、殺しに向かう場面と殺しの場面に各々テーマ曲を設けました。殺しへ向かう場面には新曲のマーチ「仕置人・出陣」。殺しの場面にはエンディングテーマ「あかね雲」のマーチアレンジ「仕置のテーマ」が使われ、どちらも素晴らしいものでした。ただ、それらは例外で、大体がエンディングテーマの演歌がマーチ風ではなくインストアレンジされたものか、過去作において、特に第1作「必殺仕掛人」で作られたものを使い回すかということになってきます。

「仕置人・出陣」(動画ないです)

https://drive.google.com/file/d/1LyMwWlydXC4Fa-V1I8feUMm-7xVfJoxD/view?usp=drive_link

「仕置のテーマ」(「あかね雲」インストアレンジ)

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つまり、音楽的にはほぼ第3作目までの間に完成し、その後はそのパターンを繰り返すこととなるので、第1作から第3作のサウンドトラックを集中的に聴くのがいいと思います。それに加えて上述のようなピンポイントで名作があるので、それらを個別に拾っていくのもいいと思います。

 

ただ、ここが大事なところなんですが、音楽的には第4作以降はパターン化していくものの、ドラマ自体は第4作目以降その世界が深まり、第10作目までかなりの出来のものが揃っています。そのドラマの名場面などと結びつけて音楽を聴くとなると、演歌バラッドのインストアレンジも悪くなく聴こえるものなのです。まぁ、やはり、サウンドトラックですから本編との繋がりは大事なところです。また、殺しのテーマだけが魅力的なのではありません。OPナレーションや劇中のBGMも魅力的なものが多いのです。なので、是非ドラマも一度見てみるとより楽しめると思います。

次回はドラマそのものについても触れていきたいと思います。

それでは、また。

 

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新曲公開中です!是非聴いて下さい♪

「春に死のう」

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「Evergreen」

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