ビバ！歌謡曲④〜「セクシー・バス・ストップ」

本日は私のオススメの歌謡曲を取り上げるビバ！歌謡曲です。今回の曲は、

「セクシー・バス・ストップ」

です。

この曲は1976年の浅野ゆう子のヒット曲です。

元々はDR.DRAGON&THE ORIENTAL EXPRESSの作品で、インストゥルメンタルだったものに歌詞を付けてカバーしたものです。　何て言うと洋楽のカバーっぽく聞こえますが、DR.DRAGONことJack Diamondとは筒美京平のことです。彼を中心に企画された覆面バンドで、ギターは元はっぴいえんどの鈴木茂、ベースは元サディスティック・ミカ・バンドの後藤次利、元ティン・パン・アレイの林立夫、キーボードに矢野顕子というスーパーグループで、まるで、アメリカのソウルバンドであるかのように売り出したそうです。それがどれくらいリスナー達を騙し続けたかはよく知りません。なにぶん、リアルタイムは知らないので。ただ、オリジナル発売から約1ヶ月で浅野ゆう子のカバーが出ているところを見ると、洋楽として発売していたとはいえ、事情は知られていたと思われます。

そもそも覆面バンドで何がしたかったのか。それはフィラデルフィア・ソウルの再現です。60年代明るく無邪気なブラックミュージックと言えば、モータウンでしたが、色々な事情で70年代中盤には勢いが衰え、代わりに勢力を伸ばしたのが、フィリー・ソウルです。ストリングスを上手くアレンジに加えたサウンドが中心でヒット曲を量産しました。その日本版を作ろうとというのがこの企画の狙いです。フィリー・ソウルにちょっと和のテイストを加えてフィリーあるあるな感じに仕上げたというもの。

ただ、私はこの曲のオリジナル盤にフィリー・ソウルを感じませんでした。一流どころの演奏ではありますが、サウンドに厚みを感じません。本物のフィリー・ソウルはバンドというよりオーケストラのような重層感、その一方で流麗な軽いノリみたいなイメージなんです。まぁ、単純に人数不足もあったかなと思います。

しかし、これを歌謡曲として聴けば、絶品のディスコサウンドです。フィリー・ソウルを意識して無理に厚くする必要ありません、インストじゃありませんし。筒美京平の書いた曲自体はさすが名曲ですから、やはり、ヴォーカル付きの歌謡曲として聴きたいです。筒美氏としては本意ではないでしょう。最初は歌詞つけるのに反対したらしいです。気持ちは分かります。でも、浅野ゆう子バージョン許してくれて、ありがとうございます。これ最高です。

浅野ゆう子は後にトレンディドラマの女王になりますが、アイドル歌手としてはトップというほどではなく、この曲も大ヒットではありません。ただ、浅野ゆう子の歌は隠れた名曲が多いです。「ムーンライト・タクシー」「ハッスル・ジェット」はやはり筒美先生のフィリー・ソウル路線です。浅野ゆう子に歌わせたものは全部本物フィリーに優ってると思ってますよ。それも先生的には不本意でしょうが。また、普通のアイドル歌謡路線なら、「恋はダン・ダン」などは聴いて損は無いと思います。まぁ、歌唱力には期待してはいけません。でも、別の魅力はいっぱいです。ベスト盤1枚あってもいいかな。

最後に後から付けた歌詞ですが、筒美先生の指名で橋本淳氏の仕事です。さすがの職人。曲にぴったりの、その上、浅野ゆう子の雰囲気にも合ってますね。やはり、浅野ゆう子バージョン最高です。是非聴いて楽しんで下さい。

浅野ゆう子盤

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