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ビバ!歌謡曲⑦特別編〜「North Wind」後編

ムー大陸です

 

オススメ歌謡曲を取り上げるビバ!歌謡曲

前回に引き続き松田聖子氏のアルバム「North Wind」の話です。前回は1曲目「白い恋人」まで書きました。

 

アルバム「North Wind」

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今回は2曲目「花時計咲いた」から。

この2曲目は極めて大事な位置付けです。基本的にアルバムを1曲目から順番通りに聴くと想定すると、やはり、1曲目はキャッチーな曲でリスナーを引き込みたい。その点「白い恋人」は満点でしょう。前回書いたように3曲目にアルバムタイトル曲、5曲目にシングルヒットが来る構成を、アルバム「Squall」を意識して敢えて作るとすれば、レコードのA面の2曲目と4曲目がこのアルバムのサウンドの印象を刻み込む役割を負うと考えます。

「花時計咲いた」はスローなピアノ、ストリングスから一転ミドルテンポのポップスとなります。あくまで落ち着いたシックな感じ。少し大人びたと言ってもいい。4曲目は「冬のアルバム」、こちらは何とボサノヴァですよ。この時期の聖子氏にボサノヴァを歌わせようって心意気、泣けてきます。フルートの音が雰囲気あっていいですね。「Squall」ではサンバなどを巧みに取り入れ夏を表現してました。今回冬を表現するのにボサノヴァを使ったわけです。どちらも曲調も歌詞も明るくはない、こうして冬を作り上げ、リスナーにそれを知らせます。

その「花時計咲いた」と「冬のアルバム」の間の3曲目がアルバムタイトル曲「North Wind」です。「Squall」も名曲でしたが、こちらも負けずいいです。ロックンロールです。シックな冬の真ん中にロック。いい構成ですよ。「あなたは凛々しいノースウィンみたいよ」、この歌詞のハメ方は好き嫌い分かれるかも知れませんが、私的にはアリです。

で、A面最後には待ってましたのシングル「風は秋色」です。聖子氏のオリコン24曲連続シングル1位獲得記録の1曲目(「青い珊瑚礁」は2位でした)です。アルバム全体が冬で、この曲だけ秋色なのは先行シングルなので、やむなしとしましょう。曲調は成功した前作「青い珊瑚礁」を踏襲してます。一聴して似てますよね。

シングル並の1曲目「白い恋人」、シックな「花時計咲いた」、パワフルなタイトル曲、ボサノヴァ「冬のアルバム」、そして大ヒット「風は秋色」で締める。A面完璧です。

ところが、6曲目、B面の1曲目で更に驚きます。「Only My Love」です。この曲もA面1曲目の「白い恋人」同様、シングルにしてもおかしくない名曲。ファンの間でもいまだに人気が高いです。また、この曲はキャッチーですが、ワルツで、A面とは変化つけた入りになってます。曲途中の聖子氏の歌う「オッホホッホ」のところいいですね。

で、B面は前述の如く3曲目にシングルですから、2、4、5曲目、全体の7、9、10曲目で色を出します。ここでA面から続く流れにブレイクを入れます。それが7曲目「スプーン一杯の朝」です。ちょっとコミカルなイントロで、いきなり雰囲気を変えます。作品としては小品ですが効果的です。ギターはどこかザ・ビートルズの「DayTripper」を感じさせます。

8曲目が「Eighteen 」です。一応「風は秋色」との両A面の扱いですから、シングルポジションに置きました。このアルバムは前作から4ヶ月後の発売でした。アイドルであっても非常に短い周期です。従って、その間シングルが1枚しか出せない。そこを勘案して両A面扱いなんでしょう。この曲だけ平尾昌晃氏作曲なのも、作家を別けて、あくまでこちらもA面と主張したかったからでしょう。曲調は50'sぽくて、聖子氏にはこういうのもアリだと思います。ただ、冬の季節感は無いです。「恋するハート 私はEighteen」、褒め言葉ですが、こういうダサさがこの後消えてしまいます、貴重です。聖子氏は18歳デビューなんですね。アイドルとしては遅いと思いますが、そんな彼女がトップ取るんですから、セオリーなんて無いですね、本当。

さて、ここから2曲でアルバムの締め。9曲目は「ウィンター・ガーデン」。これもロックを感じさせる明るいポップス。これなんか本当の隠れた名曲です。聖子氏の隠れた名曲はもはや隠れてないものが多いです。この曲とかライブでどんどんやったらいいのに。高音のところは苦しいかも。

B面は気付くと明るめに舵を切ってますね。と思ったら、最後10曲目「しなやかな夜」はマイナー調の悲しげなバラッドで終わります。少しフォルクローレが入ってるかな。悲しく終わるって言うのもなかなか出来ないと思うけど、よくやりましたね。でも、ここを再び暗くしたことによって、A面の流れに回帰し、アルバム全体に統一感が出ました。

これが私の好きな名作「North Wind」です。

 

前述の通り、タイトなスケジュールで発売された作品です。1980年7月シングル「青い珊瑚礁」、同8月アルバム「Squall」、同10月シングル「風は秋色/Eighteen」、同12月アルバム「North Wind」、そして、1981年1月には次のシングル「チェリーブラッサム」が出るのです。本当なら「チェリーブラッサム」を出した後、シングル2枚を収録するアルバムでいいスケジュール感ですが、恐らく、「チェリーブラッサム」から制作体制が変わることが決まっていたんでしょう。まず作曲に財津和夫氏が参加。その次のシングル「白いパラソル」からは松本隆氏が作詞担当となり、彼の縁で多くの作曲陣が参加するようになります。その為、旧体制の総仕上げとして「North Wind」は作られたのだと想像します。

職業作曲・作詞家は無名のアイドルに楽曲を提供し、売れてくると大物アーティストに持っていかれる。都合よく盗られたと考えるのか、育てて送り出したと考えるのか?やはり、後者と思いましょう。この作品は松田聖子氏の可能性が詰まっている。こんな曲も歌えるはずと色々聖子氏にやらせてるのは彼女の力量をよく知り、期待していたからでしょう。そして、この後、彼女はステージを上げていきました。

それでは、また。

 

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「あやかし」

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「死ぬまで生きてくんです」

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