ムー大陸です
私のお気に入りの歌謡曲を強くオススメしていく「ビバ!歌謡曲」のコーナーです。
今回取り上げるのは、
「夢芝居」
です。
1982年に大ヒットした梅沢富美男氏の歌手デビュー曲です。当時、梅沢氏は梅沢劇団の花形女形で、「下町の玉三郎」と呼ばれ人気でした。1982年はドラマ「淋しいのはお前だけじゃない」でテレビドラマ初出演も果たしていますから、メディア露出が増えて、その人気が一般層にまで広がりつつある年でした。
そんな彼に目をつけてレコードデビューをさせようというのは十分納得出来る企画です。ただ、梅沢氏の側は歌には興味が無くレコードデビューの話は断り続けていたとのこと。これは知られた話ですが、あまりに担当者が熱心なので、断る口実として「小椋佳が曲を書いてくれるなら」と条件を付けます。どうせ書いてくれる訳がないとタカを括っていたら、小椋氏が引き受けたため断れなくなってしまったのです。
以前小椋氏と同じ銀行で働いていたスタッフがレコード会社にいたため依頼する事が出来たらしいのですが、それだけでは引き受ける訳がありません。担当者は梅沢劇団の芝居を小椋氏に見せて、その舞台を観た上で作品提供を引き受けるに至ります。梅沢劇団の舞台を観た小椋氏の感想が「これは夢芝居だ」というもの。それがタイトルになりました。
その歌詞は男女の駆け引き、情念、そして何より恋愛の難しさを芝居に喩え、重ねて表現したもの。「けいこ不足を幕は待たない 恋はいつでも初舞台♩」とはいささかはったりがかっていますが、実に見事です。全編に渡って、恋愛と芝居の比喩が効いています。「化粧衣装の花舞台」「心の鏡のぞきのぞかれ」「こなし切れない涙と笑い」、どれも巧みです。そして、何より最後に「心はらはら 舞う夢芝居」とタイトルを持って来るところは構成として最高と思います。
もちろん、曲の方も同じく小椋氏によるもの。Aメロ→Bメロ→サビという流れで、全てに美しくキャッチーなメロディを使っており、小椋氏の本気度が伺えます。上記の歌詞と相まってドラマチックな楽曲に仕上がっています。
ただ、この歌の小椋氏によるセルフカバーを聴くと分かりますが、曲自体は決して派手なものではなく、出来上がりがドラマチックなのは梅沢氏の歌い方と編曲によるところが大きいと思います。
先ず、梅沢氏の歌について話しましょう。彼の歌は何と言いますか、良くも悪くも役者の歌という感じがします。非常に艶っぽくて、色気があります。声も意識して渋くしてる様に聴こえます。一方で、音は若干不安定なところがあります。「台詞一つ忘れもしない」のあたりはちょっと微妙ですね。後にこの歌を美空ひばり氏がカバーしています。彼女の歌を聴くとこの歌のメロディが明確に分かる気がします。ただ、トータルで考えて彼の歌はカッコいいし、何より彼の為にある様な歌ですから、似合っています。
そして、この曲がドラマチックでカッコいいのは何と言っても編曲のおかげです。アレンジは桜庭伸幸氏です。作曲家兼編曲家です。作曲家としては歌謡曲を中心に活躍していますが、これと言った大ヒットはありません。歌謡曲以外ではプロレスの入場テーマなどで有名です。編曲家としての方が実績が多く、代表作はこの「夢芝居」と、石川さゆり氏の「天城越え」、細川たかし氏の「望郷じょんがら」あたりでしょう。どの曲もこれでもかという位ドラマチックなアレンジです。こういった派手なアレンジの曲をやった時の桜井氏は見事です。
「夢芝居」を最高にドラマチックにしているのはあのイントロです。歌メロとは完全に別のメロディを用意しています。このイントロ、桜井氏によれば、ローリング・ストーンズの「Satisfaction 」を意識したもの。確かにそう言われてみれば、共通する雰囲気があります。「夢芝居」に「satisfaction 」を持って来るという発想自体が素晴らしいです。作曲家はフォーク、編曲家はストーンズを意識、歌手は大衆劇団の役者、これで出来上がった作品は何故か演歌にジャンル分けされるというのも不思議です。多くのカバーが演歌歌手によるものであるし、世間的には演歌と思われているでしょう。私の中では和の雰囲気を持つポップスに位置付けていますけど。
ちなみに最初の拍子木は桜井氏のアレンジではなく、現場でやってみたら合っていたので採用されたものです。役者である梅沢氏が気合い入れるために自ら叩いています。
既に少し触れましたが、ヒット曲ですから、カバーも多くあります。その殆どがオリジナルと同じ様なアレンジです。あのイントロをそのまま使っています。当然ですが、プロの演歌歌手のカバーですから、歌そのものは梅沢氏より上手いかも知れませんが、どれも彼のバージョンには遠く及びません。同じアレンジならオリジナルに軍配です。真っ先に聴くべきは小椋氏によるセルフカバーだと思います。
これはしんみりとしたアレンジで、完全に小椋ワールドになっています。ただ、オリジナルに慣れている身にはかなり地味に感じてもの足りなさがあります。
女王・美空ひばり氏のカバーはテレビの歌番組での披露したものです。
YouTubeなどで今も聴くことが出来ます。歌は完璧ですが、こちらもやはりアレンジが地味で、あの派手なイントロを求めてしまいます。桜井氏のアレンジで歌う美空ひばりの「夢芝居」はちょっと聴いてみたかったですね。小椋氏のセルフカバーと美空氏のカバーを押さえた上で、やはり、梅沢氏のオリジナルが最高というのは不動でしょう。今後もオリジナルを超えるカバーは現れることは無いと思います。
この曲は結果的に50万枚を超えるヒットとなり、大衆演劇のスターは多くの人々の認知を受ける存在しなりました。そして、梅沢氏は現在に至るまで大活躍を続けているのは皆さんご存じの通りです。
それでは、また。
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