ムー大陸です
今日はランキング企画の話をします。
よくありますね、ローリングストーン誌が選ぶベストアルバム500みたいな企画。
どこの雑誌あるいはTV、ラジオ、YouTube動画に至るまで、みんな一度や二度じゃないでしょう、そんな企画を行ったのは。企画内容はベストアルバムに限らず、ベストバンド、ベストヴォーカリスト、ベストギタリスト、ベストソングなどなど、あるいはアーティストを絞ることも可能ですね、「ザ・ビートルズのベストソング50」みたいに。色々バリエーションを作り易いですし、読者や視聴者の興味を呼ぶ企画ですから、安易にやってしまいがちです。そういう私もそんな企画があると、つい雑誌を手に取ってしまいますね。一種の祭りみたいなもんです。
ところが、こういうランキング、今まで満足のいくものを見たことがない。
というか、到底満足のいくものなど作れるはずがないと思います。
あえて、ベストソングを例にその難しさを考えてみましょう。
アルバム、アーティストならまだしも、ベストソング企画は恐らく最も難しいでしょう。何しろ、一曲ずつ選んで並べなきゃいけない。まず、コンセプトが重要です。「このランキングはある程度広い層に納得感のあるものにする」かどうかです。例えば、1位に無名のアーティスト、意外すぎる曲を持ってくると、その雑誌なり、番組の色は出せるんですが、「ああ、そういうランキングなんだ」と最初からキワモノ扱いされてしまいがちです。なので、その企画自体に説得力を持たせるためには、どこのランキングでも上位に顔を出す、いわば常連を入れつつ、独自の色を出す必要があります。ちなみにローリングストーン誌のベストソング500(2020年版)のTOP10は次の通りです、
①リスペクト(アレサ・フランクリン)
②ファイト・ザ・パワー(パブリック・エナミー)
③ア・チェンジ・イズ・ガナ・カム(サム・クック)
④ライク・ア・ローリング・ストーン(ボブ・ディラン)
⑤スベルズ・ライク・ア・ティーンズ・スピリット(ニルヴァーナ)
⑦ストロベリーフィールズ・フォーエヴァー(ザ・ビートルズ)
⑧ゲッチュア・フリーク・オン(ミッシー・エリオット)
⑨ドリームス(フリートウッド・マック)
⑩ヘイ・ヤ!(アウトキャスト)
これ出た時は驚きましたね、ローリングストーン誌冒険したなって。
一応、私が言うところの常連は①④⑤⑥⑦あたりか?③は曲が意外だし、⑨もTOP10はやり過ぎ感がある。②⑧⑩で、新しいところも加えてるよアピールです。常連5曲、それ以外5曲で、バランスを取った説得力+独自色を狙った典型的ランキングですね。
とは言え、このランキング、全く響きません。私的にありなのは④⑤⑥、でも、⑥は10位までに入れない。そもそもどのアーティストも好きですが、どの曲もそのアーティストのベストソングと思えないものばかり。まぁ、そこは好みですけど。しかし、問題はそこではありません。最も引っ掛かるのは⑦です。
ザ・ビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」です。もちろん、この曲は名曲で、この位置にいても全く不思議ではありません。ただ、この手のランキング企画において、最も厄介なのはザ・ビートルズの存在だと思うんです。と言うのも、このランキングはザ・ビートルズの最高傑作は「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」だと言っていることになるからです。そして、このランキングの15位に「抱きしめたい」、24位に「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」が入っているため、ローリングストーン誌が選ぶザ・ビートルズのベストソング上位3曲はそうなるわけです。
まず、ここを決めることが難しい。ザ・ビートルズの中でどういう順番にするかをしっかり決める。その後、他のアーティストの曲との上下を考える。もちろん、ストーンズやスティーヴィー・ワンダーのような複数曲ランキングがありそうなアーティストは事前に個別ランキングを決めることが必要でしょう。このローリングストーン誌のランキングは、正直ジョン・レノンに偏り過ぎ、ポール・マッカートニーを軽視しています。ロックを強く意識する選考にありがちな過ち(あえてそう言いましょう)だと思います。
以前、どこかの雑誌が同様のランキング企画で、ザ・ビートルズの曲最上位(確か全体で2位)を「イエスタディ」にしたのを見たことがあります。もちろん、言わずと知れた名曲です。管弦楽導入というポップスとしての実験でもある骨太な作品ですから、ランキングにふさわしいのは間違いないですが、ロック雑誌がロックの名曲ランキングで、「イエスタディ」を持ってくるのは勇気がいる。だから、全体では1位ではなく2位?と勘繰りたくなる。また、ロックバンド、ザ・ビートルズの最高傑作をバラッドの「イエスタディ」とするのはさびしい気がする。加えて、誰でも知ってる定番過ぎて、素人っぽいセレクションと揶揄される心配もある。
また、別の雑誌の企画では「ツイスト&シャウト」を選んでいたものもあった。これは、確かに、ジョン・レノンの凄まじい歌が刺さるロックな1曲ですが、ザ・ビートルズを語るのに、あれだけ名曲揃いのオリジナル曲を差し置いて、カバー曲選ぶっていうのは違うかなと感じます。レノン・マッカートニーはあれだけの名曲を世に送り出したのに、デビューアルバムに最後に追加で入れた一曲を超えられなかったの?そんな評価でいいの?と言いたくなる。
とにかく、ザ・ビートルズのランキングは難しい。いろんなタイプの曲があるし、名曲が多いから。もし、私が3曲ベストを選ぶとしたら、今日ここにタイトルを挙げた曲は1曲も入らないと思います。それも今日の気分なのであって、明日には変わりますね。
一組のアーティストにつき1曲にしてしまうのも一つのやり方ではあります。しかし、それでは名曲ランキングとして不十分極まりないです。それに、ザ・ビートルズから1曲だけ選ぶのはさらに至難の業だと思います。いっそ、ザ・ビートルズは除くっていう方がスッキリするかな。
そんな訳で、こうしたランキング企画、いつもネックになるのは常連中の常連、ザ・ビートルズの存在。彼らの存在がランキングを不満足なものにしているといつも感じます。
それではまた。