ムー大陸です
私のお気に入りの洋楽を紹介し、オススメする「洋楽至上主義」のコーナーです。
今回は、
「I Hear You Knocking」
です。
これは元々は1955年にスマイリー・ルイスが放ったヒット曲です。彼は1950年代に活躍したR&B、ブルースシンガーで、「I Hear You Knocking」は彼の最大のヒットであり、代表作です。
スマイリー・ルイス盤
曲を書いたのはファッツ・ドミノとのコンビで知られるプロデューサー、デイヴ・バーソロミュー。ピアノ弾き語りベースの3連ブルース調の曲で、「Ain't That A Shame」や「Blueberry Hill」と言ったファッツ・ドミノの一連のスマッシュと似たところがあります。実際、ファッツ・ドミノもカバーしています。
ファッツ・ドミノ盤
さて、その古典ブルースの風情を醸すこの曲が突如1970年から1971年にかけてヒットします。それがデイヴ・エドモンズのカバーです。本日のテーマはこのカバーバージョンの方です。
デイヴ・エドモンズなんて今では忘れ去られた存在かも知れません。この「I Hear You Knocking」を聴けばわかると思いますが、彼はシンプルなロックンロールを得意とするミュージシャンですが、ただプロデュース能力に長けており、アレンジには唸りますね。先ず、3連だった古風なブルースをエイトビートに変えています。これが大正解。その上で、ストレートなサウンドではありません。声は機械で加工したものとすぐ分かるところまでいじっています。ギター、ベース、ドラムも妙に無機質な音に仕上がっていて、シンプルなロックンロールとのギャップを感じます。出来上がりとしては妙にテクノが入ったロックに聴こえるのです。1970年にこれをやるセンスは相当なものです。ジョン・レノンは「これぞロックンロール!」と絶賛したと聞きます。
これは彼の母国イギリスで1位となり、その人気はアメリカまで飛び火、全米でも最高位4位まで上がりました。
デイヴ・エドモンズはよくパブロックの一派として扱われます。パブロックとは1970年代に起こった一つのムーブメントです。1960年代にビートルズの台頭とともにロックがポップミュージック覇権を握ると、当然ですが、ロックバンドの数は増えました。一方で、イギリスではそれらのバンドが満足いく程ライブが出来るだけの演奏施設、つまり、ライブハウスやホールといったものは簡単には整いません。その為、実力のあるバンドでさえライブを行う場所に困る状況でした。
そんな状況からパブでロックが演奏されるようになります。イギリスのパブは単なる居酒屋というより労働階級の人々の社交場です。新たにロックバンドのライブを始めたり、以前は別の音楽のライブをやっていたが、ロックに替えたりするパブが増えていきます。
そこで演奏されていたのは多くがシンプルなロックンロールだったこともあって、パブロックとはそういう音楽だと考えられがちです。それは間違いではありませんが、あくまでパブロックは音楽性による分類ではなく、パブという場所で演奏するムーブメントと考えています。
もちろん、パブは演奏会場としては小さくて、観客との距離が近いことからロックの持つ衝撃が伝わり易いという素晴らしさがあるのです。アメリカ生まれのパンクがイギリスでこそ広がったのは、パブロックの下地があったからと言えるでしょう。
パブロックのアーティストとしては、ドクター・フィールドグッド、ニック・ロウ、エルヴィス・コステロ、グレアム・パーカー、イアン・デューリーなどが挙げられます。後に大物になった彼らも、最初はパブで歌っていました。
ただ、パブロックは主に1970年代以降の話です。1970年に全英1位の「I Hear You Knocking」を歌ったデイヴ・エドモンズがパブで歌っていたとは考えにくいです。そもそも彼はそれ以前にもラヴ・スカルプチャなるバンドで、ハチャトゥリアンの「剣の舞」をロックアレンジした「Sabre Dance」をヒットさせていますから、もう少し大きな会場で歌っていたはずです。
「Sabre Dance」 ラヴ・スカルプチャ
それでも彼がパブロックに分類されるのは、彼がプロデューサーとしてニック・ロウ率いるブリンズリー・シュウォーツに関わったこと、そのニック・ロウがエルヴィス・コステロをプロデュースしたり、エルヴィス・コステロがブリンズリー・シュウォーツのカバーをしたこと、決定的なのはデイヴ・エドモンズとニック・ロウがロックパイルというユニットを結成して共に活動したことなどから、デイヴ・エドモンズにはパブロック人脈のイメージがついて回っている為だと思います。
「When I Write The Book」 ロックパイル
デイヴ・エドモンズの音楽はラヴ・スカルプチャ時代からずっとポップでハイクオリティなロックです。ニック・ロウと一緒にやったロックパイルのサウンドも素敵です。それでも彼の最高傑作となれば、この「I Hear You Knocking」で間違いありません。
それでは、また。
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