ムー大陸です
前回、「金田一耕助シリーズ」の音楽について、総論及び1977年4月の「悪魔の手毬唄」、テレビの「横溝正史シリーズ」の開始、そして、同年8月の「獄門島」の公開まで話をしました。今回はその続きからです。
ブームの頂点1977年の9月にはもう一つ松竹から「八つ墓村」が公開されます。角川側は最初にこれを映画化して公開する計画だったところ、松竹と方針で揉めて東宝へ企画を移したと聞きました。そうして作った「犬神家の一族」は1年前にヒット、その後既に2作も映画を公開しブームを呼びました。勝手な想像ですが、角川春樹氏は「今だ!」と思って、スピードを求めたのかも知れません。
一方で松竹は時間を掛けて「八つ墓村」を作りました。監督は野村芳太郎氏、脚本に橋本忍氏と映画「砂の器」のスタッフを結集し、大作として作り上げました。金田一役は渥美清氏でした。音楽は芥川也寸志氏で、彼らしいドラマチックで起伏のあるサントラを作っています。ただ、メインテーマはそこまで印象的ではなく、「道行のテーマ/落武者のテーマ」はインストながらシングルカットされましたが、特にヒットはしませんでした。私は意外と好きですが。
「道行のテーマ」
「落武者ののテーマ」
この映画も空前の大ヒット。1977年の横溝ブームは本当に凄いです。CMで使われた「祟りじゃー」は流行語となった程です。これは山陰の村で起こった連続殺人事件を描きます。戦国時代、毛利氏に敗れた尼子一族の落武者が落ちた先の村で村人たちに討たれてしまいます。毛利側からの報奨金に目が眩んだ村人に騙し討ちに会います。死に際落武者達はお前達を呪ってやると言って果てます。その落武者伝説に沿って事件が起きますが、この話は八つ墓の祟りを利用した殺人ではなく本当に祟りに近いので、ミステリーというよりホラーっぽいです。
それもあって私はあまり「八つ墓村」は好きじゃありません。そもそも戦国時代なら、村人が落武者狩りするのは当たり前です。あの明智光秀も落武者狩りの民に討たれました。では、光秀はそうした民を恨むのでしょうか?いや、恨むなら、彼を破った羽柴秀吉を恨むべきだし、むしろ、敗れた自分を恥じるだけでしょう。つまり、尼子義孝という仮にも尼子を名乗る大名の一族が騙し討ちにあったからと言って、本当は自分達が守るべき民を呪うなんてあり得ないと思います。そんなんだから負けたんだと思えて仕方ないです。呪うなら毛利を呪え、民ではないと考えると、この話は根本的に受け入れ難いですね。
まとめると、1977年は4月映画「悪魔の手毬唄」、4月テレビ「横溝正史シリーズ」、8月「獄門島」、9月「八つ墓村」と休み無く発表されて、出版、映画は横溝正史一色というくらいの空前の大ブームとなりました。
1978年になっても、上述のテレビ横溝正史シリーズは続いていました。角川が仕掛ける本と映画のメディアミックスは成功して横溝作品の本は売れ続けていました。その2月に公開されたのが「女王蜂」です。もちろん、市川崑監督、石坂浩二主演。その上、過去3作の犯人役が全員登場する豪華キャストで、大きなヒットとなりました。
「女王蜂のテーマ」 田辺信一
音楽は「獄門島」に続き田辺信一氏です。前作よりも少し派手になりましたが、その分俗っぽくなった気がします。映画には文句無く合っていますが、それ以上のものはありません。そこをフォローする様に映画のイメージソングが作られました。「智子のテーマ 愛の女王蜂」という曲です。ミュージカル俳優・塚田三喜夫氏が歌いました。智子というのは映画に登場するキャラで、故佐田啓二氏の遺児、中井貴一氏のお姉さん、中井貴恵氏が演じていました。彼女はこれが映画デビュー作で、本作の売りの一つでした。このイメージソングはカネボウとのタイアップにも使われました。まぁ、映画では使われてません、あくまでイメージです。
「智子のテーマ 愛の女王蜂」 塚田三喜夫
「女王蜂」のヒットで一区切りついた感があります。そこから約1年はテレビシリーズの放送だけで、徐々にブームは落ち着いて来ました。また、角川も横溝正史氏に続いて森村誠一氏で二匹目のドジョウを狙いに行く真っ最中でした。
1979年1月、これまで東宝、松竹に遅れをとった東映が横溝作品の映画を公開します。それが「悪魔が来たりて笛を吹く」です。監督は斉藤光正氏。金田一耕助は西田敏行氏でした。斉藤氏はテレビシリーズで「獄門島」を撮っていますし、安定した演出です。西田氏もさすが芸達者で良い金田一です。音楽は尺八奏者の山本邦山氏です。まぁ、「笛を吹く」だからでしょう。当時は違いますが、人間国宝ですよ。併せてクレジットされているのは今井裕氏です。サディステック・ミカ・バンドにも在籍したキーボーディストです。このコンビ良いです。残念ながら、サントラ入手出来てません。正直映画そのものはテレビシリーズの「悪魔が来たりて笛を吹く」の方が印象に残っています。映画は結構トリックとか変更というか省略されているところがあって、「あれっ」て思った記憶があるんです。でも、音楽は和洋折衷で非常にカッコいいです。サントラも本編の方も配信無いようでハードル高いかも知れませんが、機会があったら是非。
「悪魔が来りて笛を吹く」予告編
「黄金のフルート」 山本邦山
その4ヶ月後、元祖東宝はシリーズ最新作「病院坂の首縊りの家」を公開。金田一耕助最後の事件と銘打った本作が、横溝正史ブームを巻き起こしたシリーズ最後の作品となりました。監督は市川崑氏、主演は石坂浩二氏です。珍しく舞台は東京高輪です。孤島や村にしなかったのは、これが横溝氏の1977年まで連載された最新作の映画化だったからでしょう。一度は迷宮入りした事件を20年かけて金田一が解決します。横溝正史氏本人も出演しています。
「病院坂の首縊りの家」テーマ曲 田辺信一
音楽は3作連続の田辺信一氏です。テーマ曲は地味ですが、美しいです。田辺氏のテーマ曲では一番好きですね。とは言え、映画のスタートはいきなりジャズですけど、設定上仕方ないんです。サントラは好きですけど、全体的に今までよりもモダンな感じです。これまでのシリーズ4作に比べて質実剛健な感じがして好感が持てます。映画では桜田淳子氏が良い味を出していました。
この作品で金田一耕助はアメリカに渡り、この事件が最後の事件となります。
角川はこの頃は既に森村誠一氏を一躍人気とし、大藪春彦氏、半村良氏を更に売ろうと力を入れていました。その中で、一応、作品上もしっかりブームにけじめをつけて終わるところが義理堅いです。
その後、同年7月に「金田一耕助の冒険」なるパロディ映画が公開されます。監督は大林宣彦氏、金田一耕助は古谷一行氏でした。パロディ映画なので、ちょっと本来の横溝ワールドとは異なるということで簡単に。音楽は小林克己氏。近田春夫とハルヲフォンのメンバーですね。主題歌にはセンチメンタル・シティ・ロマンスも参加しています。
「金田一耕助の冒険:青春篇」 センチメンタル・シティ・ロマンス
「金田一耕助の冒険:サーカス篇」 センチメンタル・シティ・ロマンス
そして、1981年、先般紹介した「悪霊島」が新作として発表され、最後の金田一映画(最後の事件ではありません、過去の話なので)として公開されました。詳細は「悪霊島」の回でお話ししたので割愛し、サントラの話を。音楽担当は現代音楽の巨匠、湯浅譲二氏です。電子音楽の魁、クラシックから童謡まで幅広く活躍しました。個人的に最も印象的だったのは「お葬式」の音楽ですね。「悪霊島」の音楽は、何て言いますか、いわゆる、上述の石坂浩二氏のシリーズの音楽とは全然違うんですけど、横溝ワールドにちゃんとなっているところが良いです。「ああ、こうすればいいのか」みたいな感覚があります。正直、ビートルズの主題歌抜きで、サントラだけで作品としては十分だと思います。
さて、長々と横溝ワールド、金田一耕助登場作品について話をしました。各々の作品には少し触れただけで語り足りないですがお許し下さい。私は横溝ワールド大好きです。トリックは多少無理があると感じます。映画はキャストだけで犯人分かってしまいます。そんな初老の婦人に屈強な若者が殺せるかと思います、それも重たい斧で一撃?と感じます。事件解決までに何人も殺されちゃって、本当に名探偵なのって思います。でもでも、良いんです。やっぱり、あの別世界のような村社会が現れた途端に引きずり込まれてしまいます。音楽はそのファンファーレです。皆さんも楽しんで下さい。
それでは、また。
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「騒乱節」
「頑張ってって言わないで」