ムー大陸の音楽探検

ボカロP・ムー大陸が紹介する音楽のアレやコレや

「金田一耕助シリーズ」の音楽①

ムー大陸です

 

 

先般、映画「悪霊島」とその主題歌ビートルズの「Let It Be」の話をしました。その際、劇伴には殆ど触れる事が出来きなかったので、今回はその「悪霊島」も含めて横溝正史原作、名探偵・金田一耕助が活躍する映像作品の音楽について話したいと思います。

 

横溝正史氏が描く金田一耕助シリーズは当然推理小説です。殺人事件が起こり、警察も苦戦するその難解な事件を金田一探偵が解決します。それだけだと普通のミステリーですが、横溝作品には独特の雰囲気があります。それは一言で言ってしまえば、

「昭和初期の村社会」

です。

 

例えば、金田一耕助初登場となる「本陣殺人事件」の時代設定は昭和12年です。その時金田一は25歳。年齢的に働き盛りの昭和20年代、30年代の事件が多く、昭和40年代は「悪霊島」「病院坂の首縊りの家」の二つだけ。

ただ映像化作品によっては時代設定や金田一の年齢が変更されています。それでも独特のムードを醸し出しているのは、時代の流行や進歩から隔絶した村社会を舞台にしているからでしょう。村社会には風習、伝承、因縁などが存在しており、それが事件と複雑に絡み合うため、私たちがいる時代や空間とは別世界と感じさせるのです。

映画「悪霊島」は挿入歌「Get Back」がヒットした1969年の設定でした。日本の高度成長も終わりかけた時期なのに、瀬戸内海の離島を舞台にしたことにより一気に私たちを横溝ワールドへと誘います。特に映像化作品においては、風景、家屋、神社仏閣、衣装なども大いにそれを増幅します。そして、当然ですが、音楽が重要な役割を果たします。

 

とは言え、横溝作品の映像化は大変多いです。その嚆矢と言えるのは「片岡千恵蔵金田一耕助シリーズ」です。しかし、残念ながら、私はこれを観たことがありません。現在でも中々配信ですら観れないため、今回は1970年代に起こった一大横溝正史ブームの時期に制作された映像化作品に絞って話を進めます。

 

ブームのきっかけは「八つ墓村」の漫画でした。1968年影丸譲也氏によるコミカライズは大ヒットし、横溝正史に注目が寄せられるようになりなります。

 

そして、その後最初に登場した映像化作品は1975年「本陣殺人事件」です。岡山県の村で起こった密室殺人事件の話です。高林陽一氏が監督、金田一役は中尾彬氏です。この映画の音楽を担当したのが何と映画監督の大林宣彦氏です。高林監督と大林氏は同じ映画自主制作グループの盟友で、これ以前にも大林氏は高林監督の作品で音楽を担当しています。

「本陣殺人事件」テーマ曲  大林宜彦

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大林氏が音楽制作をするイメージが無いです。彼自身の作品では作ってないですよね。久石譲氏なんかが担当しますから。いや、でも、この音楽が中々です。主題歌の特徴あるドラムの音とか結構不気味で、上述の村社会を匂わせます。それこそこの映画は時代設定を制作当時の1970年代に変えていましたが、それでも十分閉鎖的な横溝ワールドになってになっていました。曲として名曲とは言いませんが、サントラとしては申し分無しです。

 

この「本陣殺人事件」を観て、「横溝正史が来る」と感じたのが角川春樹氏です。翌1976年空前の大ヒットとなった「犬神家の一族」が公開されます。角川春樹事務所が初めて映画制作に乗り出したのがこの作品です。監督は市川崑氏、金田一役は石坂浩二氏です。この作品で金田一探偵が私たちがよく知っている和装姿になります。信州の富豪一族の相続にまつわる殺人事件を描きます。随所に凄惨ながら美しいシーンを展開し、今なお横溝映像化作品の決定版、日本史上最高のミステリーと讃えられます。

それはヴィジュアルだけが理由ではなく、音楽も重要な役割を果たしています。音楽担当は大野雄二氏です。元々はジャズ界の人ですが、アニメ「ルパン三世」の音楽など幅広く活躍しています。「犬神家の一族」のテーマ曲、「愛のバラード」は実に印象的です。ヘンリー・マンシーニの「シャレード」を思わせる美しいメロディでありながら、ハンマー・ダルシマーという打弦楽器で演奏されている事からちょっと不思議な雰囲気になっています。美しく怖い横溝ワールドとこの上マッチして、この後の横溝映像化作品に与えた影響は計り知れません。サントラ盤は絶対買いです。「愛のバラード」には金子由香利氏のカバーがあります。歌付きです。悪くないですが、やはりサントラ盤が最高です。

「愛のバラード」  大野雄二

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「愛のバラード」  金子由香利

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音楽繋がりで一つ加えますと、この映画では岸田今日子氏演ずる箏の師匠が事件の解決を決定づける証言をします。この盲目ながら揺らぎ無い耳を持つ音楽家がカッコいいのです。彼女の証言シーン、この映画の中で一番好きです。

 

この映画の大ヒットで、横溝正史ブームがやって来ます。翌1977年「犬神家の一族」を配給した東宝は、角川ではなく自らの制作で「悪魔の手毬唄」を作ります。市川崑監督、金田一石坂浩二と「犬神家の一族」と同じ布陣となり、シリーズ化に踏み出しました。

岡山の村で起こる手毬唄の歌詞になぞらえた殺人事件を描きます。「本陣殺人事件」を共に解決した旧友・磯川警部が登場し、彼のひたむきな愛も盛り込まれます。それを若山富三郎氏が好演しました。私個人的には「悪魔の手毬唄」がシリーズで一番好きかな。まぁ、「犬神家の一族」は色々別格なところありますけど。

 

さて、「悪魔の手毬唄」の音楽担当は村井邦彦氏です。「翼をください」「エメラルドの伝説」他数多くのヒット曲を持つ売れっ子です。あまり映画音楽の印象はありません。編曲で田辺信一氏が入っているのはそのためかも知れません。前作からの踏襲でしょうか、テーマ曲は「哀しみのバラード」というタイトルのインストです。美しい曲ですが、正直、「愛のバラード」のようなインパクトはありません。メロディ覚えてる人は少ないのではないでしょうか。

「哀しみのバラード」  村井邦彦

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「鬼首村手毬唄」  村井邦彦

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この映画における村井氏の最大の功績は手毬唄を作ったことです。事件の核となる手毬唄が中々それっぽくて素敵です。全部覚えて歌ってみたくなりますね。ちゃんとサントラに「鬼首村手毬唄(おにこうべむらてまりうた)」のタイトルで収録されています。やはりサントラは買いです。「悪魔の手毬唄」は大ヒットを記録。映画としても高い評価を受け、横溝正史ブームは頂点を迎えますが、まだ終わりません。

 

そのわずか4ヶ月後、映画「獄門島」が公開されます。もの凄いペースですね。機を見るに敏です。これが角川春樹流でしょうか。監督・市川崑氏、金田一役・石坂浩二氏は不変です。瀬戸内海の孤島で起こる連続殺人事件がストーリーの軸です。かなり派手な演出になっていて、シリーズ中最もヴィジュアル的にはカラフルな印象を持っています。それでも3作目ということで、かなりこちら側も心得て観れるようになった気がします。まぁ、「犬神家の一族」の頃に比べて慣れて来たってことです。前作「悪魔の手毬唄」の若山富三郎氏のように金田一や犯人、被害者以外に物語を支えるキャラがいるとストーリーが際立ちます。本作では大原麗子氏が抜群でした。

 

音楽は前作で編曲を担当した田辺信一氏が担当しました。既に手慣れたもので、テーマ曲は「愛のテーマ」です。シングルカットもされました。ただ、音楽的にもパターンが固定されて来て、「犬神家の一族」で確立した様式に沿って作られています。が、残念ながら、テーマ曲自体には大きなフックは無く雰囲気で聴いてそのまま消えてしまいます。愛のテーマには前野燿子氏の歌付きバージョンもあります。本編では流れませんが、むしろ、歌ありの方が良いです。

「愛のテーマ」  田辺信一

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「愛のテーマ」  前野燿子

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ちょっと前後しますが、1977年「悪魔の手毬唄」の公開と同じ4月、テレビで「横溝正史シリーズ」が放送が開始されます。金田一役は古谷一行氏でした。「犬神家の一族」から始まったこのテレビシリーズは映画にも劣らないクオリティのドラマで、40%を超える視聴率を叩き出したこともあるくらい人気となりました。

私は配信で全部観ましたが、特に映画化されていない作品が楽しみで、「三首塔」がお気に入りです。音楽は真鍋理一郎氏と中村八大氏が担当しました。彼らの作った劇伴は今では入手出来ませんから、劇中で聴くしかありません。劇伴として申し分ありませんが、シリーズを印象づけるものは特に無いです。その役割を担ったのはエンディングテーマ「まぼろしの人」です。茶木みやこ氏自ら作曲し、歌っています。彼女は70台で今も現役で歌っていると思います。この「まぼろしの人」は結構な名曲で、妖しい雰囲気が横溝ワールドと意外に合っています。その後、次のエンディングテーマ「あざみの如く棘あれば」も歌いましたが、私は「まぼろしの人」を推します。

まぼろしの人」  茶木みやこ

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「あざみの如く棘あれば」  茶木みやこ

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この2曲は「横溝正史MM (ミュージック・ミステリー)の世界〜金田一耕助の冒険」というアルバムに収録されています。これはサントラとかではなく横溝正史作品のイメージアルバムで、羽田健太郎氏らが横溝作品のタイトルの新曲を寄せています。企画意図が分からずそれほどありがたい作品ではありません。映画会社を超えた横溝映画のテーマ曲集だったら良かったのに。ただ、そこには茶木氏のテレビシリーズのエンディングテーマや上述の金子氏による「愛のバラード」のカバー、次回紹介する「智子のテーマ 愛の女王蜂」といった貴重品がオマケの様に収録されているのです。もう、それだけで買いです。今では入手困難かも知れません。

 

やっぱり作品数も多いので、長くなりました。

今回はここまで。次回は同じ1977年の松竹映画「八つ墓村」からです。

それでは、また。

 

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