ムー大陸です
AORの最終回です。
今回はAORの中でも、アメリカビルボードチャートにランクインしなかったアーティストを紹介します。前回までに言いましたように、AORとは「都会の夜」「リゾートの休日」に合った大人の音楽。無名のアーティストの方が声やサウンドが自己主張せず風景に溶け込むと言いました。従って、前回紹介した「アーティストとしてはさほど有名ではないがヒットした楽曲」というのはその成功例と言えるでしょう。
今回は更に深掘りし、アメリカでチャートインしなかったけれど、AORとして評価の高い作品を紹介していきます。
何しろ、AORは日本におけるコンセプトです。第1回で言ったようにAdult Oriented Rockは和製英語です。日本人が勝手に「都会の夜」にピッタリだとか、心地良い海風を受けながら聴きたいななどとほざいているだけなのです。実のところ、その歌詞は必ずしも「都会の夜」でもなく、ただの失恋の歌だったりすることも多々あります。それもこれも英語歌詞の意味がよく分からない日本人なればこその発想と言えるでしょう。
そんな日本発のコンセプトですから、欧米以上に日本において評価が高いというのは生粋のAORと認識して構いません。そんな楽曲、アーティストを並べました。
「Cryin' All Night」 エアプレイ
チャートインはありませんが、デヴィッド・フォスターとジェイ・グレイドンのバンドです。1980年アルバム1枚だけ残したAOR界のブラインド・フェイスです。フォスター氏こそ本当の「AORの帝王」です。彼のプロデュース作品はAOR作品枠に多々あります。このバンド、バックでTOTOのメンバーや、後にシカゴに加入するビル・チャンプリンがプレイしています。人脈ハンパないです。都会派です。
「Let's Go Around Again」 ホワイト・アヴェレージ・バンド
このバンド実は1975年に「Pick Up The Pieces」というインスト曲を全米1位に送り込んでいます。しかし、その後人気低迷し、フォスター氏プロデュースでAOR路線に活路を見出そうとしました。結果、上手く行きませんでしたが、バンドで都会派AORを狙うのは悪くない戦略だったと思います。
「Each Time You Pray」 ネッド・ドヒニー
1976年の作品ですから、AORの魁であり、定番と言えるでしょう。アルバム「Hard Candy」は印象的なジャケットで、一見するとリゾート派に見えますが、サウンドは意外と都会派です。これはアルバムの3曲目です。
「Livin' It Up」 ビル・ラバウンディ
1982年の作品です。自らの名前を冠したアルバムです。自信作なのでしょう。ジャケットはAOR掟破りの自身の顔写真です。これがAORの傑作で、この曲はそのオープニングです。都会派でしょう。
「Let It Go」 ペイジズ
これは、バンド名を冠したファーストアルバムの3曲目。1978年の作品です。これもムードたっぷりの都会派。このバンドは大きく成功しませんでしたが、中心メンバーのリチャード・ペイジとスティーブ・ジョージはこの後Mr.ミスターを結成、全米1位2曲を放つ大成功を収めます。そちらはAORより少しロック色を強めています。
「Other People's Room」 マーク=アーモンド
これは一応バンド名です。ソフト・セルのマーク・アーモンドではありません。ジョン・メイオール・バンドでギターを弾いていたジョン・マークとサックス奏者のジョニー・アーモンドのユニットです。この曲は1978年のアルバムタイトル曲です。ですが、このバンド1971年からこんな事をやっています。AORの芽はその頃既にあったのです。
「The Lady Wants To Know」 マイケル・フランクス
1977年のアルバム「Sleeping Gypsy」の1曲目です。緩やかなムードの傑作です。彼は実際のところ名うてのソングライターです。カーペンターズ、リンゴ・スター、アート・ガーファンクルらとも仕事をしています。ただ、それは裏方で、メインとしては本当にAORの括りでしか語られないと思います。この界隈では大物です。是非この機会に聴いて下さい。
「We're So Close」 ランディ・グッドラム
1982年のアルバム「Fool's Paradise」はAORコレクションには不可欠の1枚です。今では簡単にアップルミュージックで聴けますが、かつてはレアCDだったと聞きます。この曲はアルバムの1曲目。とりあえず全部聴きましょう。彼自身はチャートインしていませんが、彼はソングライターとしては多くのヒットを提供しています。アン・マレーの「You Needed Me」は彼の作品で、1位になっています。
「Fly Away」 ピーター・アレン
「Don`t Cry Out Loud」
彼はメリサ・マンチェスターのヒット曲「Don't Cry Out Loud」を書き(自分でも歌ってますが)、クリストファー・クロスの「Arthur's Theme」の共作者にも名を連ねる売れっ子です。ただ、彼自身の曲はチャートインしていません。この曲は80年のアルバム「Bi-Coastal」の2曲目です。これもプロデュースはデヴィッド・フォスター氏です。
「Under The Jamaican Moon」 ニック・デカロ
最後は敬意を表してニック・デカロ氏です。1974年の彼のアルバム「イタリアン・グラフィティ」はAORの記念碑的作品で、日本のシティポップに多大な影響を与えました。この曲はその1曲目です。
これはカバーアルバムです。当時彼の本職は編曲家でしたからあり得る選択です。一方で全曲彼の歌をフィーチャーしたのは、裏方から陽の当たる世界へ出ようという彼の意思でしょう。確かにアレンジに比べ歌はぎこちなさが感じられます。彼のそうした挑戦にもかかわらず、残念ながらアルバムは売れませんでした。
でも、日本のファンだけが彼に注目したのです。何故か日本では1万枚ほど売上を伸ばして、マニアの間では話題になります。そうした事情もあって、彼は日本がらみの仕事をするようになります。日本で「イタリアン・グラフィティ2」を出さないかとのオファーまでありました。
彼は日本で山下達郎氏のカバーアルバムを作ります。そのアルバムの内容以前に山下達郎氏がカバーを認めたこと自体、ニック・デカロがどれほど認められていたかの証と考えていいと思います。1991年には遂に「イタリアン・グラフィティ2」というタイトルではありませんでしたが、オリジナルニューアルバム「Private Ocean」を作りました。残念ながら1992年に亡くなっています。なので、彼と日本の関係は特別です。
「Silent Night,Holly NIght(Christmas Eve)」 ニック・デカロ
詳細は述べませんが、フィニス・ヘンダーソン、レスリー・スミスなどオススメしたいアーティストは他にもいますが、先ずは3回に渡って紹介したアーティストを聴いて下さい。
今回紹介したアーティストはチャートインこそしていませんが、有名アーティストを裏で支える実力派が多い事にお気付きと思います。AORとはそういう人々によって生み出された洗練された音楽です。サウンドは甘いけど、甘く見てはいけません。
それでは、また。
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新曲公開しました!是非聴いて下さい。
「騒乱節」
「頑張ってって言わないで」