ムー大陸です
私のお気に入りのアニソンを紹介するアニソン魂のコーナーです。
今回は、
「ボルテスVの歌」
です。
タイトルからもお分かり頂けるでしょう。これはアニメ「超電磁マシーン ボルテスV」の主題歌です。1977年から放送されたロボットアニメで、名監督長浜忠夫氏の作品です。「超電磁ロボ コン・バトラーV」「闘将ダイモス」とともに長浜ロマンロボシリーズと呼ばれ、3部作の2作目にあたります。表向きは地球と異星人の戦いを描くロボットアニメですが、子供向けとは思えない大河ドラマ的設定で、主人公の親子二代に渡る因縁や被差別層の反乱などが複雑に絡まるストーリー展開は当時かなり斬新だったと思います。
原作脚本は八手三郎氏、戦隊ヒーローシリーズで多くの脚本を手掛けたテレビマンです。彼が本日のテーマである主題歌の作詞者です。原作者が作詞だけあって素晴らしい詞です。上述の複雑な設定はありますが、そういった部分を除外して、ロボットアニメ、子供向けヒーローものの王道を行くような歌詞です。チームで協力してみんなの平和を守るため戦うぞという内容ですが、やや表現や選択の語彙が洗練されています。「語ろうよ戦いの道を」って中々素敵な歌詞です。
作曲は小林亜星氏です。CMソング界の巨匠でありながら、アニソンも名作多く、歌謡曲においてはレコ大まで受賞の職人中の職人。この曲が従来のロボットアニメ主題歌とは一線を画する逸品です。前作「超電磁ロボ コン・バトラーV」の主題歌も小林氏でした。こちらは「マジンガーZ」からの流れを汲む正統派の主題歌でしたが、「ボルテスVの歌」は少し趣向を変えたようです。裏打ちのリズムが特徴的なマーチになっています。それでいてメロは勇壮でキャッチー、子供たちの心を鷲掴みするでしょう。
そして、歌唱は堀江美都子氏。女性アニソン歌手の魁です。ただ、ロボットアニメ主題歌を女性シンガーがソロで歌うのは前例がありません。彼女にとっても初となりましたが、全く問題ありません、と言うか、彼女の凛々しい歌声はこの勇壮なマーチにピッタリです。その上、コーラスにこおろぎ'73が入っており、歌が厚い。サビのユニゾン最高です。
と、まぁ、数あるロボットアニメ主題歌の中でも傑出した出来の一曲です。普通にアニメファンから愛され続けるとは思いますが、この曲はそれには留まりません。もう既に有名な話ですから、皆さんご存知かも知れません。ただ、この曲の偉業については私自身で書いてみたいと思い、今回取り上げることとしました。
その偉業とはフィリピンにおけるこの歌の人気です。いや、人気と言うのも少し違いますね。浸透とか愛着なんかの方が近いでしょうか。
日本のアニメが海外で放送されて、日本人が思いもよらぬどこかの国で人気になる事があります。ジャパニメーション全盛の昨今のみならず1970年代、1980年代などにもありました。例えば、フランスや中東における「UFOロボ グレンダイザー」の人気などは、「マジンガーZ」からの流れで見ている日本人には意外なほどです。
それと同様に「超電磁マシーン ボルテスV」のフィリピンにおける人気は私たちの想像を超えています。彼らにとって何が他のアニメとは違ったのかは分かりませんが、これがフィリピンで放送された最初の日本アニメだった事は大きかったかも知れません。それまでアメリカのアニメにしか触れた事がなかったフィリピンの子供たちが初めてロボットアニメを見たのです。衝撃とともに魅了されたのは想像に難くありません。1978年の事です。
アニメはフィリピンで大人気となり、最高視聴率58%を記録し、社会現象ともなります。ところが、人気の反動でしょうか、例えば、アニメの内容が暴力的だとか、子供たちがグッズを欲しがって困る、勉強をしなくなるなどの苦情が起こったとされています。その上、先の大戦時の日本軍を美化しているなどの意見まで湧き上がります。確かに天空剣とか出て来ますけど。
いずれにせよ、最後には残り4話を残して放送を中止する大統領令が発せられ、子供たちはその結末を見ないまま終了します。
当時のフィリピンの状況を見た訳ではありませんが、何故アニメの放送一つに大統領令が出るんだ?って普通に思います。当時はマルコス独裁政権ですけど、相手はアニメですから。日本企業の進出を快く思わなかったのか、あるいは上述の様に被差別層が反乱を起こすストーリーが独裁政権には不都合という面は多少はあったのでしょうか。他の日本のアニメは放送禁止にはなっていませんから。暴力的と言ってしまえば、ロボットアニメなんてみんなそうなってしまいますよね。
その後1986年になって、マルコス政権は瓦解、大統領夫妻はアメリカに亡命します。いわゆる、エドゥサ革命です。20年に及ぶ独裁政権に対する国民の不満が爆発した結果ですが、上述の経緯から、「ボルテスV」の続きを観たくて革命が起こったなどと冗談が言われるようになります。確かに残り4話が見れなかった世代が動いた事は確かでしょう。
新政権になり、残り4話が放送されただけでなく、1999には大々的に再放送され、またも高視聴率を叩き出し、改めて国民的アニメの地位を確保しました。この時は最初の放送時子供だったファンが大人になり、更に新しい子供たちのファンも増えます。今ではフィリピン人の94%の人が知っているそうです。日本人はそんなに知りません。主題歌も大ヒットし、フィリピン人の約7割が日本語歌詞で主題歌を歌えると言います。その上、正式に陸軍の軍歌として採用され、行進時には軍楽隊が演奏するのです。俄かには信じられませんが、フィリピンの第二の国歌の位置付けとも言われているようです。
私は「ボルテスVの歌」に関するそうした逸話を何度も聞いたり、読んだりしました。とは言え、私はフィリピンに行った事もありませんし、直接当時を知る人から聞いた訳でもないのです。
ただ、そうした逸話を裏付ける事実は目の当たりにしています。例えば、堀江美都子氏がフィリピンを訪れた際の状況を彼女自身が語っています。空港はフリーパス、白バイ先導で案内と言ったVIP待遇、どこへ行っても人々は熱狂的に迎えられたとのこと。2021年小林亜星氏が亡くなった際には、何とフィリピン大使館が追悼の声明を出しています。これまた尋常じゃありません。
そして、2023年にはフィリピンでアニメの実写化作品「ボルテスVレガシー」が制作されました。それ自体愛の表れです。そのジャパンプレミアには普通にフィリピン駐日大使が来てコメントを述べています。これだってどう見ても特別です。大使は言いました、
『「超電磁マシーン ボルテスV」はその素晴らしいストーリーと、その作品が教えてくれた家族、友情、忍耐と言った価値観で、世代を超えた感動を与えました。フィリピン人にとって単なるエンターテイメントではない。インスピレーションの源です』
これ以上の賛辞があるでしょうか。
奇跡のような作品です。
「ボルテスVの歌」は奇跡のアニソンです。
それでは、また。
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