ムー大陸です
洋画においてミュージシャンの伝記映画は大きなジャンルの一つとなっています。古くは「グレン・ミラー物語」「ベニィ・グッドマン物語」「5つの銅貨」「歌え!ロレッタ愛のために」「レイ」「ウォーク・ザ・ライン/君に続く道」など名画が目白押し。昨今では「ボヘミアン・ラプソディ」のヒットで更に増えたように思います。
ただ、残念ながら、この傾向は邦画の世界には広がっていません。昔からこのジャンルはほぼ開拓されて来ませんでした。日本においても歌手やミュージシャンは人気のはずですが、全く作られませんね。
TVドラマでは多少あって、坂本九氏の没後20年で作られたドラマ「上を向いて歩こう 坂本九物語」、植木等氏やクレイジーキャッツの舞台裏の描写があった「植木等とのぼせもん」、ナベプロ社長渡辺晋氏を主人公にし戦後の芸能界を発展を描いた「ザ・ヒットパレード〜芸能界を変えた男・渡辺晋物語」、作詞家・阿久悠氏の伝記ドラマ「ヒットメーカー阿久悠物語」もありました。でも、本当にミュージシャンの伝記なのは「坂本九物語」だけです。
映画となると、「わが愛の譜 滝廉太郎物語」あたりしか思いつきません。滝廉太郎と言うと既に歴史上の人物に近い感覚があります。ああ、後GReeeeNの「キセキ」とかかな。でも、あそこは元々顔出し無いバンドですから、伝記を見ている感は殆どありません。
洋画では、ホイットニー・ヒューストンのように1980年代以降にデビュー、活躍した人物や、エルトン・ジョンのように今尚存命で活躍中のミュージシャンの物語が普通に制作されます。
日本で例えると「松田聖子物語」「桑田佳祐物語」みたいなものがどんどん作られる感じです。ちょっと想像がつきません、やはり権利関係とか難しいのでしょうか。ホイットニーの映画なんて、故人とは言え、よくあそこまで赤裸々に父親のクズっぷりを描いたと驚きました。日本ではハードルが高いかも知れません。
そんな日本映画界において、私にとって現時点で最高と言っていいミュージシャン伝記映画が
「ROCKERS」
です。
これは今でも俳優として活躍中の陣内孝則氏と彼のバンドTH eROCKERS(以下ROCKERS表記でいきます)、特にそのギタリスト谷信雄氏を中心に、主に彼らが地元博多で活動するところからメジャーデビューするまでを描いた伝記映画です。2003年の作品です。
同じ「ロッカーズ」というタイトルのレゲエのドキュメンタリーがありますが、そっちじゃありません。あれも面白いですけど。
監督は陣内氏自身で、谷氏がバイク事故で亡くなったのをきっかけにこの映画の企画を立ち上げたそうです。陣内氏のエンタメ志向のおかげでしょう、単なる伝記映画ではなく、それこそハリウッドで作られるミュージシャン伝記映画のように青春の葛藤、サクセスストーリー、挫折、友情が正面から描かれています。それでいてコメディタッチで笑いあり、涙ありの傑作に仕上がっています。どこまで本当かは分かりませんがそこはあまり重要視していません。
陣内氏を演じたのは中村俊介氏、実質的な主人公・谷氏には当時無名の玉木宏氏、またROCKERSメンバーは塚本高史氏、佐藤隆太氏、岡田義徳氏が演じていて各々その後活躍をするようになりました。今観るとなかなかなメンバーが揃っています。また陣内氏の人脈でしょうか、中井貴一氏、佐藤浩一氏ら多くの有名俳優がカメオ出演しています。
さて、その音楽は当然ですがROCKERSのそれです。博多は豊かなロック文化の地です。井上陽水、チューリップ、海援隊をはじめ多くの人気アーティストを生みました。めんたいロックとも呼ばれています。その中で、ROCKERSはちょっと異端です。決して技術は高くないですが、荒削りで疾走感のあるサウンド、正に70年代のパンクを感じさせる活きの良いバンドでした。陣内氏のヴィジュアルも素敵です。大人気という訳ではありませんが、コアなロックファンに好かれるバンドという印象です。
彼らの有名曲は殆ど使われています。しかし、オリジナル音源ではなく、ロックンロール・ジプシーズというバンドが演奏しています。これはROCKERSのライバルでもあっためんたいロックの雄THE ROOSTERSのメンバーたちのバンドです。そして、featuring 中村俊介となっていますから、陣内孝則役の中村氏が歌を入れているのです。これはオリジナルに劣らない疾走感がある出来でオススメです。
「ショック・ゲーム~恋をしようよ~ジャッキー~可愛いアノ娘」
ロックンロール・ジプシーズfeaturing中村俊介
CDではROCKERSのアルバムはライブ盤しか入手出来なくて、このサントラをよく聴いていました。今ではアップルミュージックでROCKERSのアルバムを聴けます。逆にこのサントラの方が入手しにくいかも知れません。是非両方聴いて頂きたいです。いや、その前に映画を観ましょう。
邦画にもこういう映画が増えて欲しいですね。
それでは、また。
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「騒乱節」
「頑張ってって言わないで」
「蒼の輪舞」