ムー大陸です
私のお気に入り歌謡曲を紹介するビバ!歌謡曲のコーナーです。今回はこの曲、
「ひと夏の経験」
です。
このコーナーは、一人の歌手につき一曲だけと決めている訳ではありません。だから、繰り返し同じ歌手が登場することもあると思います。ただ、紹介する順番は好きな曲からとなりがちです。山口百恵氏初登場で、「ひと夏の経験」という事は、山口氏のマイベストはこの曲という意味に他なりません。
何故わざわざそんな事を言うかというと、今なお愛される山口百恵氏ですが、その高評価は活動の中期から後期の楽曲に集中している感があるのです。もっと具体的に言えば、宇崎竜童・阿木燿子夫妻が楽曲提供し始めた後の作品が人気上位となり、例えば、アップルミュージックの初めての山口百恵プレイリストの殆どはそういうナンバーで上位が占められいます。
その評価を改めるべきとは言いませんが、デビューから3年間の彼女をもっと高く評価すべき、いや、本音を言うと、前期の楽曲を中後期よりも高く評価すべきとさえ思っています。その思いに基づいて言うなら、
山口百恵の最高傑作は「ひと夏の経験」
で間違いありません。
私の中では「横須賀ストーリー」「秋桜」「いい日旅立ち」「プレイバックPart2」などより遥か上に鎮座しています。以前、このブログで、デビューから2年間の郷ひろみ氏は日本最高の歌手と書いたことがあります。山口氏の場合もそれと同様で、歌唱力では測れない魅力に溢れており、その上、大人の歌手に成長した後の山口氏自身さえその魅力を再現出来ない貴重性があるのです。
「としごろ」
彼女のデビュー曲「としごろ」はセールス6万枚と期待した程の成績ではありませんでした。そこでプロデューサーの酒井政利氏は「早熟な思春期の少女の赤裸々な思い」を手加減無用で詞に乗せる事を作詞家・千家和也氏に依頼します。そうして始まったのが、いわゆる「青い性路線」と揶揄された過激路線です。その第一弾は「青い果実」。タイトルは酒井氏の発案だそうです。「あなたが望むなら 何をされてもいいわ」という歌詞を当時14歳の女の子に歌わせる事を相当悩んだと言います。確かに今では通用しない手法でしょう。
「青い果実」
ただ、方針転換したのは歌詞だけではないのです。と言うか、デビュー曲の「としごろ」の歌詞は「あなたにすべてを見せるのは ちょっぴり恐くて恥ずかしい 私が私でなくなるの」というもの。既に結構攻めていると思いませんか?つまり、方針転換というよりは、方針を徹底したという方が相応しいでしょう。
むしろ、方針転換を図ったのは曲の方です。「としごろ」は無邪気な明るいポップスです。青春ソングっぽいです。しかし、「青い果実」は哀愁漂うメロディになりました。酒井氏の発注でしょうか、作曲家・都倉俊一氏のアイディアでしょうか。いずれにせよ、英断でした。
「青い果実」は山口百恵氏にハマります。マイナス要素と思われた彼女の暗さは、憂いを帯びた一種の「影」となり、低めのキーも独特の雰囲気を醸し出すのに有効でした。何よりも彼女には「こんな歌詞を無理矢理歌っている」「やらされている」感が微塵もありません。本音は別にしてそれはおくびにも出しません。恐らく、彼女は覚悟を決めていたし、腹を括って歌っていたのでしょう。そこには彼女の強い意思を感じます。
彼女と共に中3トリオと呼ばれた森昌子氏、桜田淳子氏と比べて、山口氏の魅力は分かりにくいかも知れません。例えば、森氏の魅力は何と言っても歌、歌唱力です。桜田氏の魅力は王道アイドルの可愛いさに尽きるでしょう。山口氏には森氏のような歌唱力は無いし、桜田氏のような明るさもありませんでした。山口氏の魅力の源泉はその意思に他なりません。彼女の魅力を言葉にするなら、「カッコいい」、これだと思います。
青い性路線は山口氏をトップアイドルに押し上げます。ただし、彼女は宇崎・阿木コンビと出会って大人の歌手へ成長するまでずっと「早熟な少女」であり続けた訳ではありません。青い性路線は期間にして1年弱、曲数なら4曲です。「青い果実」「禁じられた遊び」「春風のいたずら」、そして、本日のテーマ「ひと夏の経験」です。その中でも、「春風のいたずら」は「恐いわ 恐いわ 恐いわ」のキラーフレーズがあるとは言え、歌詞的には普通のラブソングで、「としごろ」の方が過激なくらいです。ですから、実質的には一時的に3曲だけ過激な歌詞を歌っただけなのですが、それでもそのイメージが残っているのは、千家氏の過激ではあるけれど、ギリギリを弁えた歌詞と、都倉氏の冴え渡るメロディによるものと信じています。彼が山口氏に提供したメロディはどれも彼の最高傑作と呼べるものばかりでした。
「禁じられた遊び」
「春風のいらずら」
そして、その青い性路線の有終の美を飾る「ひと夏の経験」がそうしたイメージに与えた影響は大きいと思います。「あなたに女の子の一番大切なものをあげるわ」という衝撃的な歌詞。芸能記者の「百恵ちゃん、女の子の一番大切なものって何ですか?」という下世話な質問に、にっこり笑って「真心です」と答え続けた彼女はやはりカッコいい。
一方で、曲の方は恐らく「コンドルは飛んで行く」をモチーフにしたであろう美しいAメロからナチュラルにBメロに展開し、「誰でも一度だけ経験するのよ」のサビでは1音ずつ切って歌うという素晴らしいアレンジです。
結果、「ひと夏の経験」は大ヒットし、彼女はその後映画、ドラマと幅広く活躍していきます。歌の方も順調で、「ひと夏の経験」の次のシングル「ちっぽけな感傷」は佳曲でした。これは過激路線ではありません。更にその次のシングル「冬の色」は山口氏のディスコグラフィー屈指の名曲で、ここでは清らかな恋が歌われています。人気者となった彼女には最早青い性路線は必要無く、むしろ色んな事を試していく段階に入ったという事でしょう。
山口氏を支えた作家陣は前期は都倉・千家でした。でも、「ひと夏の経験」の後、酒井氏の主導でしょう、「ちっぽけな感傷」は馬飼野康二氏、「白い約束」は三木たかし氏と色々試しています。それでも都倉氏が主軸でい続けたのは上述の如く、本当に名曲が多いからでしょう。個人的に特に推すのは「冬の色」「夏ひらく青春」です。ちなみに作詞の方はもう少し後になって千家氏から阿木氏に変わります。
「冬の色」
「夏ひらく青春」
同様に中期後期は宇崎・阿木が主軸ですが、ご存知の様に「秋桜」でさだまさし氏、「いい日旅立ち」で谷村新司氏を迎えています。個人的にはそこら辺より佐瀬寿一氏の書いた「パールカラーにゆれて」「赤い衝撃」の方が好きです。
「パールカラーにゆれて」
「赤い衝撃」
宇崎・阿木コンビの作品の最初は「横須賀ストーリー」です。アルバム用に書いた曲の出来が良かったため、シングルになったと聞いています。それも酒井氏の判断でしょう。さすがに「横須賀ストーリー」は名曲です。「初恋草子」は微妙ですが、「イミテーション・ゴールド」「夢先案内人」あたりまでは最高のメロディが並びます。
「横須賀ストーリー」
「イミテーション・ゴールド」
「夢先案内人」
ただ、これはもう私の趣味の問題ですが、阿木氏の歌詞は苦手ですね。「横須賀ストーリー」の冒頭のメロディに「これっきり」をはめるひらめきなどには驚きますが、彼女は韻や字余りに頓着しないのです。同じ「横須賀ストーリー」の歌詞「今も海が見えるでしょうか」の部分、2番では「潮の香りまだするでしょうか」と字余りになります。3番では「波の様に抱かれるのでしょう」と韻すら踏んでいません。そういう部分が山口氏のナンバーに限らず私にはキツイですね。
また、それ以降の宇崎・阿木コンビの楽曲が最高だったかと考えると、上述の3曲に並ぶほどの名曲は一つも無いと私は感じています。山口氏の魅力で成立してはいても、楽曲自体の魅力は乏しいと感じます。例えば、代表作の一つと言われる「プレイバックPart2」は曲としてそれほど良いとは思えないんです。「美・サイレント」「しなやかに歌って」なんかも同様です。「ロックンロール・ウィドウ」は中々の名曲ですが、逆に山口氏が歌いこなせてない印象です。アン・ルイス氏あたりなら良かったと思います。
これは酒井氏の問題かも知れませんが、更に色んなソングライターを試しても良かったのではと思います。
そんな訳で私の推す山口百恵は前期、都倉・千家作品が主です。ランキングにすると、
①「ひと夏の経験」
②「青い果実」
③「夏ひらく青春」
④「冬の色」
⑤「赤い衝撃」
ですね。次点は「春風のいたずら」。
もし、私が「初めての山口百恵プレイリスト」を作ったら、これらから始まります。そんな事ないだろ!って方もいるかも知れませんが、あくまで前期の評価を高めたいとの思いです。
それでは、また。
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「頑張ってって言わないで」
「蒼の輪舞」