ムー大陸です
過去の名曲をそのチャートアクションで紐解いていく名曲たちの成績表のコーナーです。
今回はこちらの名曲、
「Killing Me Softly With His Song(やさしく歌って)」
です。
元々はロリ・リーバーマンという歌手の作品で、1971年に発表されました。しかし多くの人はロバータ・フラックの歌唱を聴いているでしょう。オリジナルを偶然耳にした彼女が興味を持ち1973年にカバー、世界中で大ヒットし、米国ビルボードチャートでも5週間1位に輝きました。ロバータ・フラックはこの歌によりグラミー賞(最優秀レコード、ソング、女性ヴォーカル)を獲得し、キャリアの頂点を迎えます。
ロリ・リーバーマン オリジナル盤
楽曲は極めて美しく切ないメロディ。ともすれば、やり過ぎてベタになりそうなところを、ロバータ・フラックの清々しい声で絶妙なバランスを保ち上品に仕上がっています。従って、大ヒットも賞獲得も当たり前の名曲、彼女の代表作に間違いありません。
ただ、ロバータ・フラックの場合、代表作を一曲選ぶとしたら?という問いに対する答えは大きく二つに割れる可能性が高いです。それは彼女の出世作、「The First Time Ever I Saw Your Face(愛は面影の中に)」があるからです。
もし仮に私がその質問に答えるとしたら、迷わず「Killing Me Softly With His Song」を選ぶでしょう。正直言って「The First Time Ever I Saw Your Face」の良さが理解出来ないのです。何故あんなに売れたのか全く理解に苦しむのです。
あんな名曲の魅力が分からないなんてどうかしてる!そうかも知れません。好きな方には申し訳ないです。今回はそこが裏テーマとも言えるものです。
「The First Time Ever I Saw Your Face」はゆったりとした曲で、同じメロディの繰り返し、ただそれほど美しいメロディではなく、ロバータ・フラックの歌で成立している印象でした。最初に聴いた時、私は普通にブラック・ミュージックとして捉えていました。
実はこの曲はイーワン・マッコールが書いたフォークソングです。彼はイギリス人で、自身の音楽制作と併せてイングランドのトラッドフォークを拾い集めて歌っていることから、民族音楽を聴き進めていくうちに私は出会いました。その時になってこの曲がフォークソングと知って、彼がペギー・シーガーのために書いたとされるオリジナルを含め、色んなフォークグループの「The First Time Ever I Saw Your Face」を聴きました。
ペギー・シーガー盤
ピータ、ポール&マリー ライブ
その時初めて分かったのです、
このロバータ・フラック盤は普通のブラック・ミュージックではなかったんだ、イングランドのトラッドフォークをソウルシンガーがカバーした貴重な作品なんだという事が。イーワン・マッコールが発掘したトラッドフォークは単純なフレーズの繰り返しの弾き語りが多いです。例えば、ジョン・レノンが「Working Class Hero(労働者階級の英雄)」で意識して真似して見せたように。
ペギー・シーガーが歌ったオリジナル盤を聴くとこの曲も同様で、その域を出ているとは言い難いと分かるでしょう。しかし、ブラック・ミュージックの要素が混じり合うことによって不思議な雰囲気を醸し出しています。
また、イギリス人は否定するかも知れませんが、イングランドのトラッドフォークの根っ子にはケルト音楽が宿っています。スコットランド、ウェールズ、アイルランドと同様に。今となってみると、ロバータ・フラックの歌唱がそれを引き出している様にさえ感じます。それでいてどこかゴスペルにも聴こえるのです。
従って、極めてスケールの大きな作品である事は私も十分理解しているつもりです。言い訳する訳ではありませんが、私はこの曲が嫌いなのではありません。ただ、そのスケールの大きさ、不思議な魅力を理解した上で、この歌がそれほどまでに広く支持された、いや、もっと端的に言うと、売れたことが不思議なのです。
チャートアクションで振り返りましょう。
「The First Time Ever I Saw Your Face」は1972年に6週間1位を記録、同年の年間1位に輝いています。一方「Killing Me Softly With His Song」は5週間1位、年間では3位でした。チャートはその時々ではありますが、1年違いですから環境はそれほど異なっていないでしょう。ここで「The First Time Ever I Saw Your Face」が上回っています。これが実に不思議です。
更に言えば、1972年はなかなか豊作で、年間チャートは名曲揃いです。例えば、この年の年間2位はギルバート・オサリバンの「Alone Again」です。ポール・マッカートニーを思わせる美しいメロディを持つ一曲。アイルランド人として初の1位を獲得した名曲です。
3位はドン・マクリーンの「American Pie」。バディ・ホリーの死を歌った名曲です。マドンナもカバーしました。ロリ・リーバーマンはドン・マクリーンの歌を聴いて、「Killing Me Softly With His Song」の構想を思いついたと言います。
そして、4位はニルソンの「Without You」です。これまた美しいバラッドです。マライヤ・キャリーもカバーしました。私の愛するこれらの名曲を抑えて年間1位です。不可解極まります。
確かにクリント・イーストウッド初監督映画「恐怖のメロディ」で大変印象的な使われ方をしたことがセールスを促進した、それもあるでしょう。イーストウッド監督のような音楽造詣が深い人物が大胆にも丸々一曲使ってしまうのだから、やはり、素晴らしいのでしょう。
とは言え、それはある程度マニアックな存在、あくまで代表作は「Killing Me Softly With His Song」で、「Killing Me Softly With His Song」のロバータ・フラックはこんな事もやっているんだ、くらいが私には自然に感じるのです。
「Killing Me Softly With His Song」は誰が歌っても名曲です。フラック盤に限らずリーバーマンのオリジナルも、後に名を馳せたフージーズのカバーも、どれを聴いても名曲だとすぐに分かるのです。しかし、「The First Time Ever I Saw Your Face」はロバータ・フラックがもたらした化学反応、イングランドトラッドフォークとブラック・ミュージックの融合が素晴らしいのであって、他の多くの盤、フォークグループの盤ではそこまでの感動は無く、楽曲自体に魅力を感じない、これが私の正直なところです。
以前、音楽に詳しい友人にそういう思いを吐露した事があります。すると、「The First Time Ever I Saw Your Face」は日本人には難しいのかも、という回答が来ました。身も蓋も無い意見ですが、ちょっと納得した記憶があります。
それでは、また。
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「あやかし」
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