ムー大陸です
今日は映画「アメリカン・グラフィティ」についての話です。
映画「アメリカン・グラフィティ」は1973年のジョージ・ルーカス監督作品。「スター・ウォーズ」の4年前、デビュー作で失敗した彼が低予算で作った作品でしたが、これが大ヒットし、出世作となりました。これが無ければ、「スター・ウォーズ」も無かったかも知れません。
映画「アメリカン・グラフィティ」予告編
舞台は1962年のカリフォルニアの田舎町。リチャード・ドレイファス扮する主人公は高校を卒業し、東部の大学へ入学することが決まっています。明日は旅立ちの日。地元での最後の夜を仲間と共に楽しんでいます。その一晩の出来事を描いた青春映画です。
一晩の事とはいえ、彼や彼の仲間たちに色んな事が起こります。
彼と一緒に東部の大学に行く友人スティーブと彼の妹の恋の行方、走り屋の友人ジョンとそれをつけ狙うボブのレース、主人公の友人、三枚目のテリーとデビーの関係、主人公に絡む不良グループのファラオ団などなど、幾つものエピソードが同時に進行します。
その中でも最も大きなトピック。主人公が車に乗って信号待ちをしていると、隣の車線に止まった車に見知らぬ美女が。その美女は彼に向かって何かを言います。口の動きから、多分「I Love You」です。彼は一目惚れし彼女を追いかけようとしますが、見失ってしまいます。彼は街の若者がみんな聴いているラジオのDJウルフマン・ジャックを探し、放送で彼女へメッセージを送ろうと考えます。さて、どうなるかは映画を観て下さい。
映画の中では50年代後半から60年代前半のポップスがひっきりなしに流れます。これらの曲は劇中ウルフマン・ジャックの放送で流れ続けているという設定です。街のドライブインのジュークボックス、カーラジオから鳴っている形で、30曲以上が使われています。必ずしも場面に合わせて使っている訳ではないので、はまり過ぎていることがありません。ナチュラルな感じで、若者が青春を謳歌している背景にいつもロックがあった、そんな当時の街の風景が出来上がっています。ちょっと憧れます。
もちろん、選曲はジョージ・ルーカスの好みによりますが、必ずしも好みだけとは考えにくいところがあります。
この映画、設定が1962年です。アメリカはこの後、ケネディ大統領暗殺、ベトナム戦争を経験します。1962年は「幸せだったあの頃」として度々描かれます。
音楽的にも意味があって、ビートルズ上陸前なのです。1964年を境に音楽マーケット事情は大きく変わります。誤解を恐れずに言うと、ビートルズ以前のアメリカンポップスは、50'sあるいはオールディーズと一括りにしてもいいと思っています。また、一つのジャンルとして捉えてもいいと考えています。
もちろん、個別に聴くべきアーティストは存在します。エルヴィス・プレスリーはその典型です。でも、そこまでじゃないアーティストによる当時のヒット曲は、各々のアーティストを追いかけるより、コンピとしてまとめて聴く方が効率的ですし、ロック史の流れの捉え方としても充分だと思います。
ルーカスの単なる好みではないと思うのは、選曲にそんなロック史観を感じるからです。映画の冒頭に流れるのは1955年ロックンロールとして初めてヒットチャートを制した「Rock Around The Clock」です。
これはオープニングテーマの位置付けです。始まりに相応しい。劇中に流れるのはもちろん1962年以前のヒット曲。本来、劇中でラジオがリクエストに応えての放送ならば、1962年の最新ヒット曲にある程度偏るべきでしょうが、そこは敢えてオールディーズのグレイテストヒッツ的な構成にして、古き良きアメリカンポップスを、ビートルズ以前のポップスを総ざらいする形にしています。
「Runnaway(悲しき街角)」('61年)
「At The Hop(踊りにいこうよ)」('57年)
「Little Darlin」('57年)
「Why Do Fools Fall In Love(恋は曲者)」('56年)
「Do You Wanna Dance(踊ろうベイビー)」('58年)
などは名曲ですが、アーティスト単位では多くのヒットはないケースです。素晴らしい選曲です。
にもかかわらず、この映画を彩る名曲の中に、プレスリーの作品はありません。彼の作品はある意味エヴァーグリーンで、時代を超えてしまったと考えれば、ここには相応しくないと言えるでしょう。
また、劇中使われているバディ・ホリー、チャック・ベリー、プラターズなども個別に追いかけるべきエヴァーグリーンとは思いますが、Top10ヒットが50年代にほぼ集中している事、エルヴィスほどその数が多くない事を勘案すれば、劇中使われたのも納得出来るところです。これをきっかけにベスト盤などで聴き進めるのもいいでしょう。
「That`ii Be The Day」
「Johnny B. Good」
「Smoke Gets In Your Eyes」
特に、バディ・ホリーについては彼が1958年に亡くなっている事を反映しているのでしょう、ご丁寧に登場人物に「バディ・ホリーが死んでロックは終わったな」という台詞まで言わせています。これは冗談でなく当時そう考える人がいたのです。なので、彼の曲を流すのは必要不可欠でした。
この映画が作られていたであろう1972年にドン・マクリーンの「American Pie」という曲が大ヒットしました。あれは正に「(バディ・ホリーが死んで)、その日音楽は死んだ」という歌詞でした。少なくとも72年にはそう考える人が残っていたんです。映画に影響はあったのでしょうか。ルーカスはそういう考えなのか?それは考え過ぎかな。
「American Pie」 Don McCreen
そして、エンディングテーマとして流れるのははビーチ・ボーイズです。これだけがビートルズ以後1964年の作品です。ビートルズのライバルと言われた彼らを最後に持って来る。オールディーズの終焉と新時代の始まりなら、彼らが適役でしょう。
「All Summer Long」
それでいて彼らにはベトナム戦争以前のアメリカの無邪気さがあります。映画が作られた70年代には、ビーチ・ボーイズはその無邪気さ故に古き良き時代を思い出させ、少し忌避されて人気が落ちていました。
彼らの「All Summer Long」が流れる直前に、登場人物のその後が字幕で出ます。三枚目のテリーがベトナムで行方不明っていうのに衝撃を受けます。この使われ方を経験すると、「All Summer Long」を聴く度に切なくなります。
陽気なサウンドとコーラスに乗って、「夏中楽しんだね」という無邪気な歌詞。でもその夏は二度と帰らないと知っていてアメリカ人たちはこの映画を観ますから、尚更切ないですね。
この構成を見れば、アメリカの田舎町の一夜の青春群像を描きつつ、意識してビートルズ以前のアメリカンポップスをも総括してみせたのは間違いないでしょう。
なので、「アメリカン・グラフィティ」のサウンドトラックは必聴と考えます。50's、オールディーズの扉を開くなら、このサウンドトラックからで十分です。私もそうでした。このアルバムで初めてデル・シャノンの「Runnawy(悲しき街角)」を聴きました。本当に名曲です。このサントラで一番好きですね。
ベストアルバムを選ぶようなランキング企画ではサウンドトラックは全く無視される傾向が強いです。例えば、「Saturday Night Fever」のようにその映画のために書かれた名曲揃いのアルバムでさえ忘れられてしまいがちです。ましてや、その映画のために書かれた曲は一曲も無い、過去のヒット曲を寄せ集めたオムニバス盤とも言えるサントラは議論の余地無く選択肢から外されるでしょう。
でも、このサントラは見事に映画を表しているし、アルバムとしても最高に素晴らしい出来なんです。ただ名曲を集めたコンピなら、私もベストアルバムには選ばないでしょうが、映画があってのこのサントラなら、名盤として扱うのが当然だと考えます。
それでは、また。
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「あやかし」
「I Sing」