ムー大陸です
私のお気に入りのアニソンを紹介するアニソン魂のコーナーです。ようやく20回となりました。そこで今回は特別編です、
「怪獣」
を取り上げようと思います。
基本的にこのコーナーはアニソンクラシックを中心にセレクトしています。埋もれてしまいそうな過去の名アニソンにスポットを当てるようにしていますが、今回は皆さんご存知のバリバリの新曲です。なので特別編です。サカナクション山口一郎氏の復活を祝うという意味で取り上げることにしました。
とは言え、アニソン魂ですから、あくまで「怪獣」をアニソンとして考えます。サカナクション3年ぶりの新譜など他の捉え方もあるでしょうが、そこは他の方にお任せし、アニソン、アニメ主題歌としての「怪獣」を考えていきたいと思います。
「怪獣」はアニメ「チ。-地球の運動について-」の主題歌です。オリジナルは同名の漫画です。ご存知の方も多いでしょう。2020年から2022年まで連載した魚豊氏の作品で、教会からの弾圧を受けながら地動説を語り継いだ人々の物語です。あくまでフィクションです。
私は単行本1巻が出た時に試し読みをしたのがきっかけで読み始めました。実に素晴らしい作品で、私がここ数年で観賞した漫画、小説、映画、ドラマの中で最も面白く刺激的な作品でした。地動説を語り継ぐ人々が主人公ですから、死んでは次に引き継がれていくので、主人公は一人じゃありません。チは地動説、地球の地、命を賭けて地動説を守った主人公たちが流した血、そして、そうやって受け継がれた知識の知であり、何よりそれをどうしても求めてしまう人間の知性の知です。
名シーン、名台詞は数知れずですが、最初の主人公ラファウが先ず魅力的です。彼は抜け目無いエリートで、将来を嘱望されていました。でも、地動説と出会いこの世界の美しさに気付き、感動を知り、真理を切望し、結果、「僕は、地動説を信じます」と宣言、彼は異端者として処刑される道を選びます。彼は自分で思う以上に優秀で誠実でした。
彼が異端審問官ノヴァクに放つ台詞は印象的です。貴方達教会が相手にしているのは僕ではない、ましてや異端者などではない。貴方達の敵は好奇心であり、すなわち人間の知性だと言います。凄い台詞です。一応、作品内ではC教となっており、この第一章はファンタジーの位置付けですが、キリスト教をモチーフにしているとすれば、今なお世界の人口の32%が信者である宗教であっても、というか、その程度では人間の知性は飼い慣らす事は出来ないという言葉はある意味痛快で、スケールが大きいです。
すみません、「チ。-地球の運動について-」の話をすると長くなってしまうので、先に進みます。その大好きな作品がアニメ化されると聞いたのは随分と前の話ですが、それを聞いてどう思ったか。嬉しい?とんでもありません。余計な事をするなと怒りにも似た思いがよぎりました。何しろ漫画だけで十分満足していましたから、アニメ化など全く望んでいません。アニメ化したらしたで、演出が原作と違うとか、声がイメージと違うとか色々不満が出るものです。
そして、懸念されるのが主題歌です。これほどの世界観を持つアニメの主題歌は相当に難しい。もちろん、正面から書き下ろしたとすれば、ですが。つまり、適当に人気アーティストに頼んで、何となくなタイアップでお茶を濁すのではと心配していた、と言うか、そう確信していました。そこへやって来たのが「怪獣」です。
一聴して正面から書き下ろしていると感じました。
歌詞の中のいくつかの言葉を例にとってみましょう。
「淡々と知る 知ればまた溢れ落ちる 昨日までの本当」
「順々と知る 何十螺旋の知恵の輪 解けるまで行こう」
物語の中の主人公たちもまだ地動説を証明出来ていません。だから、毎日研究を続けていくのです。そんな彼らの姿と歌詞がシンクロします。
「丘の上で星を見ると感じるこの寂しさも
朝焼けで手が染まる頃にはもう忘れてるんだ」
「点と線の延長線上を辿るこの淋しさも
暗がりで目が慣れる頃にはもう忘れてるんだ」
当然ながら、主人公たちは星の動きを観察します。そして、観測した星の動きを繋いで地動説の証明を試みるのです。夢中でそれを行う彼らの姿を思い浮かべます。
「君に話しておきたいんだよ
この知識を」
「淡々と散る 散ればまた次の実 花びらは過去」
自らを犠牲にしても次世代に地動説を伝えていく彼らの思いが伝わります。
そして、この歌の強烈なキラーフレーズ
「この世界は好都合に未完成 だから知りたいんだ」
正にこれこそ上述の人間の好奇心、知性です。
以上一部ではありますが、「チ。-地球の運動について-」の主題歌として申し分のないシンクロを見せています。その上、特筆すべきは、漫画内の台詞をそのまま引用したりすること無く、あくまで、作詞者山口一郎氏の言葉で抽象的に表現している事です。それでいて妙に具体性の部分でマッチしているのが空恐ろしいくらいです。
一点、歌詞において、物語の主人公たちを「怪獣」に喩えています。そして、タイトルにもなっています。彼らの知への欲望を怪獣の咆哮という形で表現したのでしょう。正直、この部分に関しては個人的にはシンクロは感じません。とってつけた、と言うか、曲のタイトルを意識したキラーワードを使用した感じがしました。もちろん、「怪獣」は魚豊氏の漫画の台詞ではありませんから、そこは山口一郎氏の言葉として受け止めるべき部分なのでしょう。
上述のように物語とあそこまでリンクしてるのだから、曲名も「チ。-地球の運動について-」というタイトルになってもおかしくはありません。でも、そうではなくあくまで「怪獣」として、サカナクションの新曲として先ずはあるんだという事です。アニソンとしての純度は落ちるでしょうが、どちらも成立させるという意図を感じます。そこはやむを得ないと言うか彼らとしては当然の選択だと思います。
さて、「怪獣」売れてますね。嬉しいですね。
こういう歌が売れるって、変な話ですが、私としては結構意外です。
何より、山口一郎氏が元気になって良かったです。
この歌が好きな方は全員漏れなく「チ。-地球の運動について-」を全巻読んでほしいです。
アニソン魂ではアニソンクラシックを紹介していますが、その果てにあるアニソンの今がこのような名曲だと思うと実に幸せな気持ちになります。
それでは、また。
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