ムー大陸です
私のオススメ洋楽を紹介する洋楽至上主義のコーナーです。今回は、
「Jet Airliner」
です。
エミネムの最新ヒット曲「Houdini」を聴いたことがありますか。あの曲で大胆に取り入れられたリフは「Abracadabra」という過去のヒット曲のものです。それを作ったのがスティーブ・ミラーです。
「Houdini」 エミネム
「Abracadabra」 スティーブ・ミラー・バンド
本日のテーマ「Jet Airliner」も彼のバンド、スティーブ・ミラー・バンドのヒット曲です。「Abracadabra」は82年のヒット曲ですが、彼らは主に70年代を通じて活躍したロックバンドです。スティーブ・ミラーのソロ名義も合わせて3曲のナンバー1ヒットを放っていますから、70年代のトップバンドの一つです。その3曲とは「Joker」「Rock'n Me」「Abracadabra」で、いずれも名曲なので、そちらを先に紹介すべきとの思いも無いわけではないのですが、スティーブ・ミラーの特徴をよく示す、そして、何より私の大好きな「Jet Airliner」を取り上げる事にしました。
さて、そのスティーブ・ミラーの特徴とは何か?
それはズバリ、リフです。
いや、リフが特徴のバンドならたくさんいる、レッド・ツェッペリンなんて正にそう!なんて声が聞こえそうですが、スティーブ・ミラーのイメージは「リフ辞典」です。レッド・ツェッペリンがオリジナルのカッコいいリフを編み出すバンドだとすると、スティーブ・ミラーは古典の使い回しが得意な人です。
彼は元々ブルース系のギタリストから出発していますから、そうしたリフの知識というか貯蔵量は相当なものなのだと思います。数々のオリジナルのリフにある泥臭さなどを綺麗に取り去り、70年代のラジオから流れるのにうってつけの洗練されたライト感覚のリフに生まれ変わらせるのです。勿論、古典ブルースのみならず、ロック全般にそのアンテナは伸びており、見事にそれらをアレンジして自分のものにしてしまいます。
それは言ってしまえば、パクリかも知れませんが、基本的にリフについてはメロディではないので、余程でない限り、法的には盗作にはならないでしょう。例えば、モータウン発の「You Can't Hurry Love」のベースリフは世界中で使い回されていますが、いちいち盗作とはなりません。定番のリフはみんなの宝物みたいなところがあって、それを実に巧みに利用するのがスティーブ・ミラーと考えています。
さて、本日のテーマ「Jet Airliner」は1977年のヒット曲です。彼らのヒット曲は1974年の「Joker」が最初で、82年の「Abracadabra」が最後です。実はヒット曲以前からバンドは活動していて、頑固なファンは、ヴォーカルにボズ・スキャグスがいた初期が全盛期と言うでしょう。それには一理も二理もありますが、74年売れっ子となってからの方が私は好みです。軟弱ですみません。そして、76年から77年、アルバムで言うと、「Fly Like A Eagle(鷲の爪)」、「Book Of Dreams(ペガサスの祈り)」あたりは、特に上述のような「リフ辞典」色が最高潮に達した時期と思います。「Jet Airliner」は正にその絶頂期にシングルカットされた1曲です。
聴くとすぐ気付くと思いますが、この曲のリフはクリームの「Crossroads」に他なりません。同じと言っても過言ではないでしょう。
「Crossroads」 クリーム
ただ、スティーブ・ミラーの特徴です、「Crossroads」のリフと比べるとかなり洗練されて、大衆向きになっていると感じます。勿論、歌のメロディ自体は全く別物で、自分達のバンドの曲に巧みにリフを取り入れているのが分かります。そして、そのメロディはキャッチー、ただ同じメロディの繰り返しだった「Crossroads」とは違い、Aメロからサビという構成で、耳に残るし盛り上がる1曲に仕上がっています。
その上、演奏についても、至るところに気を使います。この曲は3番まであります。2番までは基本の通りに演奏と歌を聴かせます。3番のサビに来ると、先ず歌メロを微妙に変えます。次にベースラインを変える。そこで「Yeah Yeah Yeah Yeah♩」を挟んでサビを繰り返します。そこでは今度はギターのフレーズを変える。ここがかっこいい。そして、最後は歌詞を変えます。一応、またベースも変わってるかな。その後フェイドアウトへ。実に細やかです。飽きさせないように注意を巡らせて、最後の最後まで緊張感を維持する職人技を見せてくれます。
彼らの技術によってリフも同じでありながら全く別のものになっていると感じることでしょう。この「Jet Airliner」の前年にビルボードで1位を獲得した「Rockn' Me」は、フリーの「All Right Now」の焼き直しでしょう。これも比べてみて下さい。
「Rockn` Me」 スティーブ・ミラー・バンド
「All Right Now」 フリー
私はスティーブ・ミラーの職人芸が好きで、定期的に聴きたくなるアーティストの一人になっています。ただ、誤解しないで欲しいのですが、それでも、私は「Crossroads」の方が好きですよ、まぁ、あれは別格ですから。
冒頭でお話ししたエミネムの「Houdini」の曲のいいところは全部スティーブ・ミラー・バンドが作ったところでしょう。エミネムの手柄ではありません。とは言え、この曲がきっかけで、スティーブ・ミラー・バンド再評価の動きになったら嬉しいですね。彼らは今も現役ですから、そうなれば来日もあるかな。って言うのは考え過ぎか。
それでは、また。
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